合物の沸点・融点の話と実験

 実験入りのお話です。 仮説実験授業にする事も可能と考えられますが、時間がよけいかかる上に、面白くなりそうもないので、実験つきお話とします。 お話なので授業は容易ですし完成度を云々するような複雑な内容ではありません。 ただし、「三態変化」既習です。

実験  水の沸騰する温度をはかりましょう。 実験すると96度、98度、100度いろいろですね。ではグループ(または班)によって沸騰する温度が違っているのでしょうか。 水銀を使った温度計をわたしますから、それで測りなおして下さい。 100度位でしょう。

 赤い液体の温度計は見やすいが不正確なのです。 水銀を使った温度計のほうが正確ですが、目盛は見にくい。 ですから不正確でも赤い液体の温度計が普通に使われます。 体温のように正確に測る必要のある場合には最近まで水銀温度計が使われていました。 水銀を使った体温計があれば見せてもらいましょう。

 水銀温度計でも普通のものは1度位狂っている事があると思って下さい。 0.1度まで正確に測れる水銀温度計は値段が高いから学校にはありません。水銀温度計はこわすと、猛毒の水銀が飛び散るので、すぐ先生に返す事にして、赤い目盛の温度計のほうを使ってください。

 赤い液体の温度計で沸騰したとき96度になっていた場合は、96が本当は100なのだ。97なら本当は101で、95なら本当は99度だと思って下さい。
 赤い液体の温度計で沸騰したとき97度になっていた場合は、97が本当は100なのだ。98なら本当は101で、96なら本当は99度だと思って下さい。

 では砂糖を溶かした水は100度より上の温度で沸騰するのでしょうか。それとも下の温度で沸騰するのでしょうか。 
 温度が高くなると水の分子の運動が激しくなり、沸騰の時は空気の圧力に負けず水分子は空中につぎつぎと飛び出してゆきます。 もう少し正確にいうと、たくさんの空気分子が水にぶつかる勢いより、たくさんの水分子が飛び出そうとする勢いが上になり、水分子が勢いよく空中に飛び出します。
 
ですから高い山の上では、空気の圧力が低い、つま空気が薄いので水面にあたる空気分子が少なくなり、水分子の沸騰の妨害が減りますから低い温度でも水分子が空中に出ます。 つまり富士山や日本フルプスの頂上近くでは水が低い温度に沸騰し、ご飯がうまくたけなくなります。

 さて水分子が空中に出ようとするとき砂糖分子がまじっていると、空中に出る援けになると思いますか、それとも邪魔になりそうですか?  絵を書いて考えましょう。
 小さいマルに大きなマルがまじっていたら、小さいマルは空中に出やすくなるか、出にくくなるか・・・・

 妨害なら100度では沸騰しない事になります。もっと温度をあげて分子に勢いをつけてやらないと沸騰しない。援けるなら100度以下でも沸騰します。

では実験。 さっきの温度より高くなったでしょう。つまり100度以上です。
練習 塩だったらどうなるでしょう。
 理屈は同じですから、砂糖だろうが塩だろうが、沸点は上がるのです。たくさん溶かすと、ジャマモノがふえますから、もっと温度を高くし、水分子に勢いをつけないと空中に出にくい。つまりもっと高い温度で沸騰する。 ですから、溶けているまざりものがあると、沸騰する温度は一定でなくなり濃
いほど沸点が高くなります。 塩と砂糖ほ両方溶かせばもっと沸点は上がります。
 
 アルコールでも話は同じですから、アルコール分子沸騰の時ジャマモノである水分子が多くまじるほど沸点が上がって行きます。これが教科書のグラフのようになる原因です。

 もっと正確に言えば、「共沸」がおこるが、中学でそこまで踏み込む必要はないと思ったので抜きました。

 水が沸騰するときは、砂糖が溶けていると沸点があがります。では凍るときはどうでしょうか。
 水は固体になるとき、分子が6角の形に並びます。 大きさも形も違う砂糖分子は6角に整列した水分子の中に入れません。 ですから水と砂糖はべつべつになるのです。 

 すると砂糖の分子をどかしながら、水の分子が集まる事になるので、集まりにくい、つまり凍りにくくなる。 砂糖水は0度では凍らないのです。
 ですからアイスクリームやアイスシャーベットを作るのに必要な温度は0度以下で、ふつうマイナス8度とかマイナス10度位にします。
 
 砂糖でも塩でも「塩化カルシウム」でも、みな水の分子が集まる(つまり氷になる)邪魔ですから、溶かせばマイナスの温度でないと氷ができなくなる。
たくさん溶かすと、氷のできる温度はどんどん下がる。 それを利用したのが、冬の運動場に霜柱のたたないようにする薬です。

 霜柱は土の中の水が氷になったものです。 しかし砂糖や塩や塩化カルシウムをまくと、これらが溶けた水は0度で凍らない。 たくさんまけば冬の特別寒い
日でも氷ができない…・つまり霜柱ができない。 そのために値段の安い塩化カルシウム(白い粒が大きな袋に入っている)を運動場にまく事があります。

 つまり溶けているものがあると、融点は下がり、溶けている濃さによって融点が違ってくる事になります。 混合物の融点は一定でない。