熱(熱量)と温度の話

  一部だけ仮説実験授業形式にする事もできますが、仮説が対立するという形でなく、カンの対立程度ですから、あまり生徒が主体的にならないと考えられるので、時間節約のため、実験つきお話としました。
 完成度は低いが、授業は簡単です。 温度と熱量の区別ができるようになれば良いが、これでも怪しい生徒が残るから改良が必要です。
 改良するには、温度と熱量の区別ができないと間違える問題を入れその部分を仮説実験授業にすれば良い筈ですが、問題を思いつかなかったので授業そのままです。

熱量計算
質問  今100度位の水(湯)50グラム位と20度位の水50グラム位をまぜたら、温度は何度位になると思いますか?
 天秤や普通の台はかりでは大変時間がかかるので、家庭用の安い電子はかりを2つ用意します。
 電子はかりは、ビーカーやメスシリンダーをのせたままスイッチを入れるとビーカーやメスシリンダーがのった状態を0グラムにできるので、計測が断然速い。 湯は家庭用片手なべでつくり、取っ手を持って水や湯をはかりの上で入れる。練習すれば大体、位、約なら楽に入れられるが、失敗したらやり直す。 
 結果確認は理科係で良い。 正確さを要求すると不器用では困るし時間がかかる上、温度計の不正確とかまわりに逃げる熱が問題になる。だから、「位」とか「約」をつける。

質問 では約100度の水約50グラムと約20度の水約100グラムをまぜたら温度は何度位だと思いますか?
  70度から80度位  40度から50度位  
 皆考えましたか?  大体の予想で良い。 
  実験。 
 今度は冷たい水のほうが多いのですから、中間の60度より低いはずですね。
    
 では正直に計算してみましょう。 こういう問題を解くときは基準の温度を決め、それぞれの水がどれだけの熱を持っているか計算すれば良い。
 
 水1gを1度上げるのが1カロリーですから、0度の水1gを100度にするには100カロリーの熱が必要です。
 また1リットルの水(1kg)を0度から100度まで上げるには100000カロリーの熱が必要です。 逆に100度の湯1リットルを0度まで冷やすと100000カロリーの熱を出す。

 この問題でいうと100度の水が50グラムですから、0度の水を基準とすれば100×50で5000カロリーの熱を持っている。
 20度の水100グラムですから、0度の水を基準とすれば20×100で2000カロリーの熱を持っている。
ですからまぜると、合計7000カロリーの熱を持つ事になります。
 水100グラムで7000カロリーなら70度です。 今の場合全部で150グラムですから
 7000÷150で、1グラムなら約46.7の熱を持つことになり、正確な答は46.7度ですが、学校にある温度計ではそこまで正確に測ることができません。47度でも良いでしょう。
  
 このような計算ではまず、理屈で大体の値を予想し、それから計算します。 計算には計算間違いがありますが、間違えると答がたいていは間違いの答えが予想の範囲にはいらない。 これで大多数の計算間違いを防止できますから、大体の数字の予想は大切です。

 練習2つ程度。 予想・・・・等量なら何度だが、熱い湯が多い(冷水が多い)から何度位としてから実験。 計算の順。

質問 今度は銅板約50グラムを片手なべの湯にいれて熱し100度にします。 その銅板を50グラムの水に入れたら
 何度位だと思いますか?
   水の場合と同じでしょうか。 水の時より低い温度でしょうか。 高い温度でしょうか。
 この場合は水の場合と比べてどうかという事が問題なので、何度位という予想はしない。 科学の本を読んで勉強している生徒以外の大多数生徒は理屈を考えられないから、この程度の視点絞りで我慢。

銅は同じ温度、同じ重さでも、水よりずっと少ない熱しか持っていないのです。 つまり銅は水よりずっと少ない熱で温度が高くなる。 銅は水より温まりやすく、さめやすい。
  
  おなじ100度でも、水のほうが銅より「他のものを暖める熱量」はずっと大きい。

 実は「水は特別温まりにくくさめにくい」物質です。 教科書の比熱の表の解説。 比熱が0.5だと水の半分の熱量カロリーで同じ温度に温まり、0.1だと水の1/10の熱量で同じ温度になる。
 ふつうの岩や石は1度暖めるのに1グラムで1/4カロリー位の熱で良い。鉄や銅は1/10カロリー位の熱で良い。 ですから、100度の湯は100度の石の4倍、100度の鉄や銅の10倍の熱を出して、まわりを暖めます。
 夏にプールの水が冷たいのに、まわりのコンクリートや鉄が熱い事があります。同じだけ熱を太陽から与えられても、水はコンクリートの1/4しか温度が上がらないのです。

 今は使い捨て懐炉に押されてあまり使われませんが、昔は寒い冬にユタンポというものが使われました。 水筒のようなものに湯をいれて布で包んだものです。 水が同じ温度でもたくさんの熱を出す事を利用したものです。

 逆に水を暖めるときは銅や鉄よりたくさんの熱(熱量)が必要です。つまり強い火で長い事暖める必要がある。

 海や大きい湖のそばでは、昼が涼しく夜は暖かい。 太陽の光があたり、太陽から熱が与えられても、陸とちがって水はなかなか暖まらない。同じ温度になるにはたくさんの熱が必要なのです。だから昼の水の温度は陸より低くその水に冷やされる空気の温度もひくく涼しい事になる。 夜は地球の熱が宇宙に逃げて温度が下がりますが、水は陸の何倍も(4倍位)熱を逃がさないと同じ温度にならない。 だから夜の温度はなかなか下がりません。
 同じように海のそばは夏涼しく冬は暖かい。 海に囲まれたハワイの8月は東京や大阪の8月より涼しい。

 太陽の光が一番強いのは6月の夏至であり、7月.8月とだんだん弱くなるのですが、それでも暑くなる。湯をわかすとき、とちゅうから火を小さくしても、火からもらう熱量のほうが大きいので温度はあがりつづけ湯がわくのと同じです。
 太陽からくる熱のほうが逃げる熱より大きいので、6月、7月、8月とだんだん暑くなる。 9月になると貰う熱量より宇宙に逃げる熱量のほうが大きくなるので気温はさがりはじめます。
 
 太陽の光の一番弱いのは12月ですが、1月のほうが寒い。 12月の太陽の光が弱いので、太陽からもらう熱は少なく、宇宙に逃げる熱のほうが大きい。だからだんだん温度が下がって寒くなる。

  ではモノが燃えるときは、どの位熱を出すのでしょうか。 家庭科で「1gの炭水化物4カロリー、脂肪9カロリー」というのを習います。 これはデンプンやサトウなど(炭水化物という)を二酸化炭素と水に変えるときに、4000カロリー、脂肪つまり油が二酸化炭素と水に変わるときは9000カロリーの熱が出るという意味です。 
 家庭科では1キロカロリーつまり1000カロリーを1カロリーという習慣です。

 燃える時も、人間の体の中でも、これらは二酸化炭素と水になりますから、同じだけの熱を出します。 人間の体が冬でも37度位あるのは、そのためです。

 また氷が水にするときは、キチンと並んでいる分子をバラバラにしなくてはならず、1gで80カロリーの熱を与え分子を動かしてやる事が必要です。ですから、0度の水よりも0度の氷のほうが、冷やす働きはずっと強い。 つまり氷が融けるとき、80カロリー分まわりを冷やすのです。