色環---1時間の仮説実験授業
質問 虹の色を知っていますか?
太陽が出ていたら先生にプリズムで人工の虹を作ってもらいましょう。
この通り,プリズムから出たたくさんの色の光が見えます。
端から赤、橙、黄色、緑、青、紫の順です。もちろん中間の色というのもあります。 黄色と緑の間に黄緑があり、青と紫の間に 藍がありますが、ここでは中間の色は抜きにして、この6つの色について勉強します。
(6つの色名を順に板書して確認する)
質問 これらの光をレンズで集めたら何色になると思いますか?
(結果は白。 プリズムで集めてはいけない。 生徒は白がプリズムで分解されたとは思わない。色がついたと思うだけだ。だからまた不思議なプリズムで「色が消えた」と考えてしまう。)
話 虹の色の光をみな集めると白い光になります。つまり赤、橙、黄 色、緑、青、紫の光をあわせると白になるのです。プリズムで光に色がついたのでなく、もともと太陽の光は赤、橙、黄、緑、青 紫の光の集まったものなのです。
質問 赤と黄色をまぜると何色に近い色になるか知っていますか?
黄色と青をまぜると何色に近い色になるか知っていますか?
コマに丸い紙を貼り、その紙を半分赤と黄色にぬりわけてから、 コマをまわして見ましょう。予想どおりですか。
黄色と青では…・予想どおりになりましたか。
(実験を省略しない事。 橙に近い色になるとか、だいたい緑になるという事が重要。 つまり細かい色相の違いを無視する事に慣れさせる)
話 大体予想どおりの色になりました。 赤とはいっても、絵の具の 赤と、クレヨンの赤、色紙の赤などは同じでない。黄色も青も実際にはいろいろあります。 ですからできる橙が赤に近い事もあれば黄色に近いこともあります。
同じように出来た緑が黄緑に近いこともあれば、青緑に近いこともあります。しかし細かいことは気にしないことにしましょう。 大体何色になるという風に考えましょう。
問題 紫と緑をまぜると何色になりますか?
ア.青に近い色
イ.黒に近い色
ウ.灰色,ねずみ色に近い
エ. その他
なぜそうなると思いますか。
(青。 ただし実際には藍のまじった青になることが多い。藍色だなどというと混乱がはじまるから、それまでに大体の色…基本的な点に注目することになれさせる。)
質問 赤と青をまぜると何色になりますか?
なぜそうなると思いますか?
-----ここで色環仮説が出るクラスは、その仮説を肯定も否定もしないでおく。
問題 紫と橙をまぜたら何色になるのでしょう?
ア.黒に近い色
イ.灰色,ねずみ色に近い
ウ.赤に近い色
エ.青に近い色
オ.緑に近い色
なぜそうなると思いますか?
-----色環仮説の出たクラスは、仮説をしゃべらせておけば良い。
ア、ウ、時にイを加えた対立になる。
仮説のでないクラスでは、「他のクラスでは次のような意見が出ました。 色を混ぜるとたいていにごる。だからウかアが正しいのではないかというのです。 違う意見も出ました。
赤と青で紫になるのは、人間の目には赤と青が隣りに見えるからにちがいない。だから、今度もそうで赤になるというのです。」 と仮説を紹介する。(赤に近い色になる)
他の場所にも書きましたが、仮説実験授業に慣れていないクラスではしばしば上記のような助け舟が必要です。 自分で実験の意味・結果予想について考えず、教師・塾講師・教科書・受験参考書から結論を押し頂く事になれていると、選択肢があっても仮説考案をしないから、仮説実験授業がクイズつき授業に化けてしまい、生徒たちに仮説を持ってもらうためには御丁寧指導が必要となる。 この授業は補教対策用であり、しばしば仮説実験授業を一度も経験してしていないクラスで行うのです。
話 赤と黄色をまぜると,虹の七色では赤と黄色の間の橙色になります。
黄色と青をまぜると黄色と青の間にある緑になり,紫と緑をまぜると、紫と緑の間にある青になる事がはじめの実験でわかりました。
ところが,赤と青をまぜると紫になるのです。 そして紫と橙をまぜると赤になる。
虹のときとは違って、人間の目には赤と紫がとなりの色に見えるという考えが実験と合います。
ですから,人間の目で見ると色は赤,橙,黄色,緑,青,紫そしてまた赤と輪のように並んでいると考えられ,これを学者は色環(シキカン)といっています。 環は輪の事で色が環のように丸く並んでいるというのです。----- 色環を見せる
作業 (白い大きな画用紙の上に,色画用紙の赤を重ね,高くさしあげる) では,いまから30秒この赤い紙を見る事にします。 先生がハイッといったら30秒の間じっと見て下さい。
30秒たったら,先生は赤い紙をどかしますが,そのまま同じ所を見つづけて下さい。 すると白い紙に色がついて見えます。 少しでもよそ見をすると,色がついて見えませんから,注意。
質問 色が見えましたか? 見えた人は手をあげて・・・その色は,赤・橙・黄・緑・青・紫のどれに一番近いですか?
見えなかった人はもう1回挑戦してみましょう。 近くに出てきても良いです。
(すこし青みのある緑になるのが普通。
この時「何色になりましか?という質問はいけない。青緑などという答がでると、授業は混乱となる。 実際に見える色は実験に使った赤色色素のスペクトル分布によってかなり異なる。 実験結果で本質的なのは緑に近いということだから 6つの色のどれに近いかと聞き、主要な事に生徒の目を集中しなければいけない。 )
問題 では緑の紙を見続けると、白い紙が赤・橙・黄・緑・青・紫のうち何色に近い色に見えてくると思いますか? なぜだと思いますか?
(桃に近い赤になるのが普通だが、実験に使った緑色素により見える色はかなれ違うから、選択肢なしの質問はいけない。 )
質問 では青い紙を見続けると白い紙が赤・橙・黄・緑・青・紫のうち何色に近い色に見えてくると思いますか?
質問 黄色い紙を見続けると白い紙が赤・橙・黄・緑・青・紫のうち何色に近い色に見えてくると思いますか?
質問 紫の紙を見続けると白い紙が赤・橙・黄・緑・青・紫のうち何色に近い色に見えてくると思いますか?
この3つの実験は,色紙がたくさんあれば,班ごとにやってみましょう。 なければ,先生にやってもらいましょう。
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.紫と緑の混合は,かなりにごる青になりやすく,そうなると実験結果が明快とはいえない。これは現実の紫色素が紫以外の光を多く反射しているからだ(つまり紫の純色でなく、赤と青の混合色に近い)と考えられ,予備実験で適当な紫と適当な緑を選んでおく必要がある。 簡易分光器があればうまくゆかない原因がわかります。
.橙と緑の混合はどうかという問題に対する答えが難しい。 理屈では黄色になるが、明るくて純度の高い黄色でないと,日本人の黄色という範疇に入らないからです。
手持ちの橙と緑ではどうしても黄土色になる場合…
「赤・橙・黄・緑・青・紫り中では黄色に近い色になりました。 理論は間違っていません。 しかし私たちはこのような色を 黄色でなく黄土色と言っています。 日本人はにごりが強く暗い黄色に黄土色という別の色の名をつけているのです。 同じようににごりの強い橙色には茶色という名をつけています。
英語では明るい茶色をオレンジという、つまりアメリカ人やイギリス人は明るい茶色を橙と同じ色にしますが、日本人は別の名をつけているのです。 それと同じように濁った黄色には黄土色という別の名をつけているのです。」
というお話をつける。