静電気からオームの法則まで
授業の容易さB 完成度C
多数派の教科書では「電流の強さ」つまり「1秒に動く電子の数」の「強さ」という古い慣用語を使い、生徒が電圧と電流を混同する原因になっています。この授業書を使う場合、大日本と学図以外の教科書の学習を禁止する必要があり、他3社の教科書の場合は受験用に大日本か学図の教科書のコピーを与えて下さい。
授業書「もしも電子が見えたなら」と電池の直列と電圧の関係、電圧計の使用法を既習とします。 なおこの授業書では電気量と電流の区別のできない生徒が圧倒的多数派になってしまいます。 区別が必要なら、根本的改良が必要です。 またこの授業書最新版での授業は1回ですから、細かい問題点が多数ある可能性はあります。また電圧概念も直観的で電位差という概念に達しません。
「回路と実際の配線の比較」など演習を書かず、ただ練習をさせて下さいと書いた部分もあります。 完成度が大変低く、誰でも思いつく程度かそれ以下の事は、書いても文が長くなるだけで無駄です。
静電気と普通の電気
毛とプラスチックをこすると静電気がおきます。 これで小型ネオン管をつけてみましょう。 一瞬暗くつく。
予備実験の事。
では家庭や学校にきている100Vの電気でネオン管をつけてみましょう。明るくいつまでたってもついている。 電気がたくさんあり、いつまでも流れている。摩擦電気では電気の量が少ないようです。
保護抵抗のないものは50キロオーム程度の抵抗直列で。予備実験必要。 大型のものは保護抵抗が内部にありますが、小型はないほうが普通。ないと壊れます。
質問 では1.5Vの電池でつくでしょうか。 つかない。
電気の勢いが弱すぎます。
電池も60個ほど使えばつきますが…・。
まさつ電気は電気の勢いは1.5V電池よりある。 しかしすぐ消えるところを見ると電気の量が少なくてすぐ電気がなくなってしまうのではないでしょうか。
一方、まさつ電気では髪の毛が吸い付きます。 1.5Vの電池では吸い付かない。摩擦電気の力は1.5V電池の電気の力より強い。 強い電気を調べるのに検電器という簡単な道具を使います。 摩擦電気をおこした時に使った下敷きを検電器にふれます。 開く。 電池ではダメです。
質問 100Vの電気で、この検電器は動くと思いますか?
実験。 開かない。
質問 3万ボルトという強い電気を発生する、誘導コイルという機械を持ってきました。 大変勢いが良い電気ですから、この通り空中でも押しとおります。 100Vの電気でさえ危険ですから3万Vは大変危険であり機械から1メートルはなれて下さいもある。 これなら検電器が動くと思いますか?
実験。 開く。
摩擦電気の勢い、強さはこの誘導コイルの電気に近いという事になります。しかし摩擦電気は危険でない。 どうしてでしょうか。
滝の下にいる人を考えましょう。1メートルの滝なら、よほど水量がなければ危険でない。昔は3-4メートル位の滝の水に打たれて修行する坊さんが多数いました。 日本一高い滝は400メートルありますが、その下はもちろん大変危険です。 でも400メートルの絶壁の上から霧吹きでさじ一杯の水を吹き落としたらどうでしょうか。 水の量があまりにも少なく危険でない。
摩擦電気はあまりにも電気の量が少ないので、危険ではないのです。1.5Vの電池は1.5メートルの滝で、上に貯水池があり、それがカラになるまで水が流れるようなものだし、100Vの電気は100メートルの滝の上に湖がありその上には雪があっていつまでも水が流れてくると思えば良いのです。
電圧…電気を流そうとする勢い
水圧は水を流そうとする勢いです。蛇口から少し水を出し、それを指で止めると水圧があるという感じがします。
電圧は電気を流そうとする勢いです。 その勢いの単位が、ボルトです。 1.5Vの電池の電気は1.5Vという勢いしかありません。100Vの電気は100Vという勢いがあり、3万Vの電気はあまり勢いが良くて空中でも押しとおってしまい、静電気力も強くなる。
電池には電気がつまっているし、100Vの家庭・学校の電気は発電所から次々に電気が送られてくる。 摩擦電気では電気の量がほんの少しだから、さわっても電気が少ししか流れない。 だから安全なのです。
江戸時代の蘭学者たちが使ったライデンびんという道具を使い、摩擦電気をためておくと摩擦電気でも危険になります。
電気はプラスから流れるのかーから流れるのか。 教科書の実験。 電子が動くことは既習だから、実験を見せ、「本当はマイナスからプラスに電子(マイナス電気を持つ)が動く」のだが、「それを電気(電流)がプラスからマイナスに流れる」と言う習慣だというお話。
どうも整理が悪いようで、もっとよい配列順がありそうです。 電圧と電流の区別は学者にも困難な時代が続き、「電気の強さ」Intensityなどという、両方の区別ができない時代の用語が残っています。 「電気の強さ」が「電流の強さ」に変化しました。 ですから、大日本や学図の教科書のような良心的教科書を使っても生徒にとって電流と電圧の概念を区別する事は難しい。曖昧な概念では困る例を入れなければいけない。
掃除機と電池
電池とか電源装置というものは、電気掃除機のようなものだと思って下さい。掃除機は片方から空気を吹き出し、片方から空気を吸い込む。 そのついでにホコリ、小さいゴミや、ハエも吸い込んでしまう。 電池はマイナス極から静電気力で電子を追い出し、プラス側で電子を吸い取る装置です。 電圧が低いので、空中を電子が飛ぶという事はないが、金属が自由電子とプラスの金属粒(イオンという)からできているため、大変弱い静電気力でも電子が動くのです。
「もしも電子が見えたなら」が既習でなければ、金属と電流の説明必要。
電流
滝の大きさを示すには、高さと水量が問題になります。 華厳の滝や、那智の滝のように1秒ごとに流れる水量はそれほどでないが高さのある滝もあれば、九州の曽木の滝のように落差は小さいがそのわりに1秒毎に流れる水量の大きな滝もあります。 水は分子でできていますから、水量のかわりに水分子の数で考えることもできる。 動く水分子が毎秒多数あれば、水量のある滝です。 滝の場合は1秒1トンの水が流れるとか毎秒10トンの水が流れるという。
電気も1秒で動く電気の量または1秒で動く電子の数を考えることができます。 滝で多数の水分子という粒が流れるように、電子という粒が流れる。 電流の大きさの単位になっている1アンペアの電流とは 1秒で約600、0000,0000,0000,0000個という物凄い数の電子が動く(流れる)という電子の流れです。
1ミリアンペアはその1/1000(ミリとは1/1000のこと)ですから 1秒で約 6000,0000,0000,0000個の電子が流れるという電流です。
記号はAでこれをエィと読まず、アンペアと読む。
では豆電球と電池をつないだとき、どれだけの電流が流れるか測ってみましょう。
やり方は教科書と同じですが次の注意を守って下さい。 電気は眼に見えず大多数教師の指導では生徒実験の間違い・混乱がひどいからです。
1. 生徒グループ代表を集め、教師の机の上で実験を見せる。
2. まず豆電球と計器を黒板図と同じ位置関係になるように置かせ、次に色コードを黒板に書いて、その通りの位置関係になるようにコードを置かせてからつなぐ。
こうすると生徒実験の間違いはほとんどなくなりますから、机間巡視で疲れることはなくなり、結局授業が速く進みます。
注意 実験のとき、たいていの実験ではプラス側を赤、マイナス側を黒か青にします。そのほうがプラス側とマイナス側を間違える事が少ない。 赤十字と覚えてください。
では電流計と豆電球のつなぎかたを反対にしてみましょう。電流はどうなるでしょうか。 電池のプラスが赤いコードです。
同じです。 電池から出た電子の数は電流計をとおっても豆電球を通ってもかわらない。 かわればどこかで電子がたまっていまったり、足りなくなるヘンなことになる。 分かれ道がなければ電流は最初から最後まで一定のままです。 しかし電圧は勢いですから、電球を通ると弱り、最後は電池のマイナス側と同じになってしまいます。
この表現はまずいが他の方法を思いつかなかった。
抵抗
固定抵抗100オームを50ほど用意します。 ニクロム線とグラフを使う教科書式の授業では数学苦手の生徒が全滅となるから、2倍3倍という離散量での結果から比例関係を導くほうが安全です。
これは抵抗といって、電気の流れるのを妨害するから抵抗という。水の流れだったら細かい網か粗い布のようなものだと思って下さい。 流れを邪魔はするが、止めるわけではない。
また水分子の流れでなく、大勢の生徒がトラックを回っていると考えれば、抵抗は網とか跳び箱のような障害物にあたる。 電流が通る障害物だと思って下さい。
では電池一個と抵抗1つをつなぎ、電流を測ってください。 豆電球のときより電流はかなり小さいです。 いくらくらいですか?
16mAくらいになる。
では抵抗2つを直列にしてみましょう。
直列の説明。
質問 電流はどの位になると思いますか? 2倍 同じ 半分のどれでしょう。
抵抗3個では流れる電流はどの位のはずですか?
抵抗4個では流れる電流はどの位のはずですか?
オームの法則
では抵抗を1個にし、電池直列2つとします。
質問 電圧つまり電気を流す勢いが2倍になったら、流れる電流つまり動く電子の数は何倍になると思いますか?
2倍 1.5倍 1倍
質問 電池を3つつまり電圧を3倍にしたら、電流は?
質問 電池4つ、つまり電圧を4倍にしたら、電流は?
抵抗が同じ(一定)なら、電圧が2倍、3倍だと電流も2倍、3倍で電圧と電流は比例します。
ですから数学でいうと y= 定数 × x であり、
(抵抗が一定) 電圧=定数 × 電流
です。
さっきの実験では抵抗が2倍、3倍だと 電流は半分、3分の1でした。
つまり反比例です。 数学でいうと x×y = 定数であり
(電圧が一定) 抵抗 × 電流 = 定数です。
この式を左右ひっくりかえして、さっきの式とくらべます。
(電圧が一定) 定数=抵抗 × 電流
(抵抗が一定) 電圧=定数 × 電流
丁寧に書けば
定数(電圧が一定、つまり電圧イコール定数)=抵抗 × 電流
電圧=定数(抵抗が一定、つまり抵抗イコール定数) × 電流
両方の式をよく見ると、1つの式にまとめられます。
電圧 = 抵抗 × 電流
電圧が一定なら、抵抗と電流が反比例つまり、邪魔が大きいと電気がながれに
くくなるという式になり、 抵抗が一定なら、電圧と電流が比例つまり勢いがよ
ければたくさん電気が流れるという式です。
この式をオームの法則といいます。
抵抗の単位をオームといい、Ωというギリシャ文字であらわします。 みなさんのところにくばった抵抗は100オーム(Ω)ですから、計算すると
1.5V = ? A × 100 Ω
1.5 =?× 100 ですから? は1.5/100アンペア、つまり15/1000アンペア、15ミリアンペアとなりました。 電池は新しいと1.6か1.7Vあるので大抵のグループでは15でなく16か17になったのです。
練習問題
この抵抗2つで電池2つなら(直列)、電流はいくらでしょうか。 計算による方法と、理屈でやる方法両方でやってみましょう。
理屈でやる方法とは、電圧つまり勢いが2倍で邪魔が2倍だと答えは同じになりそうだ と考える方法です。
式では 3V = ? A × 200Ω これを解くと
やはり15mAです。
練習問題をいくつかやらせて下さい。
オームの法則を分数で書いた本もありますが、何が分母で分子だったか忘れやすいのでこのような掛け算の形で覚えて下さい。 何が左だったかだけ覚えれば良いからです。 また英語の頭文字を使った E=I×R という式もあるが、日本人には覚えにくいから、ボルト・イコール・アンペアオームと覚えるほうが楽です。
静電気とオームの法則
電気工事の人はゴムの長靴にゴムの手袋をはめます。
電圧(普通は100V) = 電流 × 抵抗
ですから、抵抗が1億オームなら電流は 1億分の100で大変小さく安全です。
人間に摩擦電気が危険でないように、電圧でなく電流が危険なのですから、ゴム長靴にゴム手袋なら,100Vにさわっても危険でなくビリッともこない。 摩擦電気はそれ以上の電圧ですが、電子の数が少しですから、電流が大きくな
る事はない。 オームの法則はあとからあとから電子が流れてくる電池の電気や発電所の電気で通用する法則で、摩擦電気にはあてはまりません。
並列回路
では抵抗を2つ並列にします。 並列とは抵抗の両方の端とも、もう一つの抵抗の端とつながっているつなぎかたです。 今までのような片方のはしだけつながっているのは直列という。
問題 では抵抗2つを並列につないだ場合、電流はどうなるでしょうか。
1つの時の 2倍 1倍 半分
カンでなく、川の流れとこまかい網とか、大勢の人間がトラックを走るときの障害物が並列の時を考えて下さい。 川の水の網をとおった水量や多数の人間(電子は多い)が走るとき、障害物が並列にならんでいたら…・
問題 抵抗3つのときは
1つの時の 3倍 1倍 1/3
では次のような複雑な回路ではAの豆電球はBの豆電球と同じ程度に光るでしょうか。 実体図もつけて下さい。
Aのほうが明るい Bのほうが明るい ABは同じ明るさ
では×印のところにメーターを入れます。 Aの電流はBの何倍ですか?
この実験は教師実験とし、グループごとに結果を見せます。もちろん図と同じかたち
に実物を置く。
問題 次の回路で、20オーム抵抗の両側に電圧計を入れたら電圧は大体いくらですか? 実体図もつけて下さい。
抵抗が20+40で60ですから、それで電池から出る電流を計算します。 それから、電流×抵抗が電圧ですから、その電流に20をかければ良い。
実験で確かめてみましょう。
質問 今左の銅線に1アンペア、右の銅線に0.5アンペアの電流が流れているとします。
下の銅線には何アンペアの電流がながれると思いますか?
図を描いて下さい。 絵が得意なら2つの川の合流の絵があると良いかも知れません。
電流は電子という粒の流れだから、水分子という粒の流れである川で考えてよい。
川が合流すれば、流れる量は足し算になる。 電流も足し算でよい。
問題 次の回路の電流計は約何アンペアですか? 抵抗は全部100オームです。
まずAから。 Aの抵抗には電池3ボルトがかかっているからオームの法則でAの電流が出る。
次に抵抗2つで何オームか調べ、電池の電圧とそれから電流を計算すれば 抵抗2つを流れる電流が出る。半分になっているだろうか?
最後にその2つが合流したのがBだから、足せば良い。 ご苦労様!!
実体図をつけて下さい。
実体図と配線図の変換の練習は別に必要です。
この授業書では次のような疑問に答えられないという欠陥もあります。 電池と豆電球の簡単な回路で、豆電球のマイナス側と電池のマイナス側では電圧の違いがないのに、どうして銅線の中を電流が流れるかという疑問が実際に登場している。
ポテンシャルという概念を文学的に説明するか、銅線にも抵抗があると説明するかになり、実際には僕が後者の説明をして切り抜けましたが…。 電圧という概念が曖昧で電位差という概念に達していない。