授業書「虚像と実像」
幾何光学を教える授業書です。 普通の公立中学だと授業の容易さC。 扱う理論が多いので生徒が苦しくなり
やすい。 ただし大変面白いから理論続出に耐えられる生徒たち、つまり酒井式行事や無競争集団主義の指導を
採用したため理論的に考え積極的に出る傾向の強い生徒集団、またはエリート校生徒なら授業容易です。完成度
A。授業時間は指導要領準拠授業より大となり他の場所で時間を浮かせる工夫の併用となる。ただし中高一貫授業
なら時間は指導要領準拠授業よりかなり短くなるはずです。
第1部 鏡
幾何光学を凹面鏡からはじめました。教科書のようにはじめから凸レンズを題材とすれば、子供たちは「誰でも
知っている事をどうしてこう難しく学ぶのか」と感じ、生徒が積極的に考えようとしない授業になりやすい。 凸レンズ
より先に虚像を学ぶ事になりますから、虚像も目の中の凸レンズのため網膜では実像と同じように見えるという教
師にとって自明の説明方法は採用できません。 虚像が見える理由の心理学的説明が不可避と考えられます。
「私たちの目に見えている像は、目に入る光から忠実に再合成されたものでなく、眼に入る光を参考として脳が推
定した像である(正確に言えば眼に入る光を脳が分析し合成した像だが再合成にしばしば間違いがある)」という
事は心理学者、医学者の常識ですが、それを直観的に教える。これは生徒の多くが興味を持つ「UFOが見える」原
理であり、昔の人が幽霊を見たという原理ですから万人に教える価値のあることだと思われます。
存在しなくても、脳が推定するために見える像がある。 それを教えないで二本の点線を引き、こういう場合は虚
像が見える、という結果だけ示す説明をするから、「わかったような、わからないような」感じとなります。優等生はよく
わからない説明を丸暗記し、多数派生徒は忘れてしまう。 水晶体がレンズだという説明をすればレンズ光学がわか
っていないのだから説明はわからない。 普通の中学一年生徒でもわかるように心理学をある程度やってから幾何
光学に入ります。
人間はいつも目玉を動かしている
人間の目ではまわりのほうがどれ位よく見えるかという実験です。 3人一組
の実験ですから理科係の人二人に前に出てもらって、実験の方法を説明します。
先生が係の人一人の後ろから、耳の横20センチ位のところに両手のにぎり
こぶしを出しました。 君、にぎりこぶしが見えていますね。見るとき目玉を動
かしてはいけません。真ん中にして下さい・・前を見る。それでも見える。
見えないと答えたらすこし手を耳より前に出す。
もう一人の係の人は目玉が動かないかどうか前から見ていて下さい。
問題 にぎりこぶしでなく、2本とか3本とか4本の指を立てたらその指の数が
わかるかという問題です。 次のア、イはどちらが正しいと思いますか?
ただしここにいる理科係の人は手をあげたり意見を言ったりしてはいけません。
ア 指を何本立てたかすぐわかる…まわりのほうもはっきり見える
イ わかる事も間違えることもある…まわりははっきり見えない
では今から実験をしますが目玉を動かさず、いつも前を向いた状態、つまり目
玉が真ん中にあるようにします。 実験する人、実験される人、目玉が真ん中か
どうか注意する人の3人一組で実験して下さい。
お話 人間の目というものは真ん中のほうだけはっきり見え、まわりのほうはボ
ケボケである事がわかります。 私たちは自分では気がつかないだけでいつも目
玉を動かしています。右に目玉をうごかせば右ははっきり見え、左に目玉を動か
せば左がはっきり見える。
「いつも目玉を動かしているから全体がはっきり見える」のです。
まわりはボケボケという事を利用した手品
これを利用した手品があります。
簡単なものではトランプが大きくなったり小さくなったりする手品があります。
先生が手品師だとして手品のタネ明かしをしましょう。
小さいトランプを先生が右手に持って、そのトランプが生徒のみなさんに見え
るようにします。
手品師は大きいトランプを左手に隠し持っている(手のひらのほうを見せ、また
手を裏返して隠す)。
ではトランプが大きくなります、といって呪文をムニャムニャとやりながら、
両手をあわせます。この通り大きいトランプと小さいトランプ両方が隠れている
(また手のひらのほうを生徒に一瞬見せる)。 呪文が終わったら「ハイッ 大きくなり
ました」といって右手にトランプを持ち、左手から遠いところに出した大きいト
ランプを見せます。 みんながそれを見ているスキに、いままでのトランプを持
っている左手をズボンの左のポケットに持っていって隠す。 皆右手のほうを見
ていますから、左手のほうはボケボケで手品師のやっている事がわからないので
す。
皆に右手のほうを見せ、左手のほうはボケボケに見えるようにするのが手品師
の腕前です。 そして右手を見ている間に左ポケットからもっと大きいトランプ
を出してくる。 そして両手を合わせてまた呪文。
これを繰り返すとトランプはどんどん大きくなります。
「テレビではどうするの」と思う人もいるでしょう。 テレビでは画面が小さ
くまわりまではっきり見えるからこの技術は使えないように思えます。しかしテ
レビでやる手品ではカメラマンや司会者がグルになっていますから、この手品で
いうと左ポケットのほうを写さないようにするのです。
この手品をもっと複雑にしたのではインドに伝わる「ミカンやマンゴーの種を
植木鉢にまくと、すぐ芽が出てだんだん木が大きくなり、皆の見ている前でミカ
ン(マンゴー)がなる」という手品があります。 この手品は今昔コンジャク物語とい
う千年近く前の本に出ている。 その本を書いた人にはタネがわからなかった
らしく、インドから来た人が大変ふしぎな事をする、と書いてあります。
まず手品師が植木鉢にタネをまいて、それから白い布をかけ呪文を唱える、そ
の間に助手(手品を手伝う人)が子葉の出た植木鉢をそーっと布の下にすべらせ
るように入れる。助手のほうはボケボケだから、そちらでやっている事はわかり
ません。 そこで手品師は「芽が出ました」といいながら、そちらの植木鉢を出
して皆にみせる。 みな芽のでたほうを見ているスキに、助手が種まきの鉢を隠
しもっと大きいミカンの木を植えた鉢をそっと布の下に入れる…・。 これの繰
り返しです。 この手品はいまでもインドで行われています。
盲点の実験
実験1
盲点というのを知っていますか? その実験をします。 右の目を閉じて左で丸
を見ると×も見えています。でも×のほうを見てはいけません。 紙と目の間距
離を変えて×の左右方向を調節すると、×が見えなくなります。 距離は先生の
やるのを見てだいたいそれ位というところから調節して下さい。
生徒が間違い実験をして授業が混乱する可能性があるので選択肢を作らない。
練習 もう一回盲点の実験をやってみて下さい。×がまた消えたら実験をやめて
下さい。
盲点という見えない点があるわけは目の構造(つくり)を勉強するとわかり
ますが、2年の時やります。
問題 盲点の実験を少し変えてみましょう。
以下の実験はラマチャンドランという学者の本、論文から。
同じような実験をしたら、×は消えて、線の間が白くなると思いますか?
白くなりませんから実験して下さい。
練習問題 同じような実験をしたら
あ ×は消えて、柱がつながる
い ×は消えて、線が見える
う ×が消えるだけ。
お話 目には何も見えないはずなのに、線が見えたり柱が見えたりするのは不思
議ですが、これを科学者は次のように説明しています。
「目には何も見えていないのだが、線があるはずだと脳が勝手に思うと線が見
え、柱が続くはずだと勝手に考えると柱がつながる」
脳はここだけ線や柱が見えないのはおかしい。つながっているはずだと勝手に
考えてしまうのです。 脳があるはずだと考えデッチあげた線や柱が見える。
質問 盲点があるから、私たちの見ている世界の中に、本当は目に見えない点が
あるはずです。 目で見ている中心からこの紙の○と×の角度だけはなれた方向
には何も見えないはずという事になる。 しかしちゃんと見える理由は?
お話 脳がここに見えるはずだと勝手に考えたものが見えてしまうから、ちゃん
とあたり全部見えるような気がするのです。
本当に目に見えている世界は中心だけはっきりしていてまわりはボケボケなの
に、どこでもはっきり見えると思う理由がやっとわかりました。 脳はさっき目
玉を動かしてはっきり見えたのを覚えていて、そのはっきりした絵と今目に見え
ている絵をある程度取り替えてしまう。 さっきはっきり見えたものが今でも見
えるはずだと勝手に考えて取り替えるのです。
それが本当はまわりがボケボケなのに、全体がはっきり見えるように感じる理
由です。
ヘリオスコープというものがあったら「脳は本当に目に入った世界をを勝手な推定
(考え)で変えてしまい、その変えたものが見えてしまう」ということがよくわかるの
で先生に見せてもらいましょう。切れ込みから一瞬間見えたものから脳が勝手に考え
て「もとの絵はこうに違いない」としたものが見える。
「人間が見ている世界は本当に目に入った光の世界でなく、脳がこう見えるは
ずだと勝手になおしたものが見えている」のです。
これが昔の人に幽霊が見えたり、現代人にUFOが見えたりする原理です。信じている人は
一部の像から「見えるはず」の部分を脳が勝手に考えて、幽霊やUFOの像を合成する。ゴ
キブリの嫌いな人はセミのぬけがらを見てあわててよける事があり、ヘビの嫌いな人は山道に
転がっている落ちた木の枝をみて一瞬飛び上がったりします。セミのぬけがらの姿に脳が勝手
に考え継ぎ足しをしてゴキブリの姿を作り、木の枝の形に脳が勝手につぎたしをしてヘビの姿が
できたのです。
反射の法則 …今まで通りの授業で良い
レーザーポインタが普及したので大変授業が楽になりました。 黒板にレーザーポ
インタをつけるようにすると光の進路がよくわかるからです。
以下の授業書で繰り返しが多いので、どんな教え方でも定着率は高く大差ないはず。
ですからここの部分は授業書不
要としました。
ただし入射角・反射角を直観的に把握するのは困難だから、はじめのうちは入射角、反射角
を扱わず鏡のほうから測った角が等しいとする。 そうしないと後で困ります。 ドリル少々。
距離
あれは遠くに見える、これは近くだ・・という事はどうしてわかるのか勉強するための実験をしま
しょう。小学校時代に実験をした人がいるかも知れませんがもう一回やって下さい。2人一組の実
験です。
理科係の人一人だけ前に出てください。 君はボールペン(シャープペンシルを持ち、先生はボ
ールペン(シャープペンシル)のサックを持ちます。 片目をつぶって下さい。 先生はサックを君
の目と同じ高さに、傾かないように出します。 さあうまく入るでしょうか。
では全員実験して下さい。
注意 相手が片目をつぶってからサックを出す事。相手の目の高さと同じにする事。また傾かない事。 違反の実験を
する生徒が出るから教師が注意。違反実験はどうしても出るし、経験者がいる事も少なくないから選択肢なし。 違反実
験が出ると仮説実験授業では指導要領準拠授業の場合と異なり大混乱となりテスト成績もとんでもない結果になる。 違
反実験の可能性が少しでもあればその部分は仮説実験授業形式にしないようにします。
片目では距離が正確にはわからないので、サックに入れるのが難しい。
では両目ではどうして距離が正確にわかるのでしょうか。
左手をひらいたまま鼻の前に出し、右目で手のひら、左目で反対側が見えるようにして下さい。
そして右目だけでみた世界と左目だけでみた世界をくらべて下さい。見えるものが大分違う。
では右目で遠くを見てください。 次は左目。見えるものはほとんど同じです。脳は「右目でみ
た場合と左目でみた場合同じように見えるモノは遠くにある。」「右目でみた場合と左目でみた
場合違って見えるモノは近くにある」と勝手に考えます。そうすると距離がわかる。 脳は勝手に
距離を計算してしまうのです。ではどうして正確に距離を計算するのでしょうか。
距離の計算
豆電球が光ると
このように光がきて、右目と左目にはいります。
すると右目と左目は「こういう方向から光が来たぞ」と脳に伝えます
そういう光が来たのだから2つの線の合わさるところに豆電球があるに違いな
いと脳は計算するのです。
モノを見るたびに脳は距離計算をする。
片目でも目玉を動かすと少しは見える方向が違うので、大体の距離はわかり
ますが、正確とはいかない。
質問 馬やウサギの目は両側についていますから、後ろも見えて便利です。
人間も目が横についていれば、「安く売ります」とか「この人チカン」などという紙をぶらさ
げるイタズラはできません。
しかし猫やライオンの目は人間と同じく前についています。 猫やライオンは両方の目が
前についていないと困るのですがわけがわかりますか?
質問 猿も両目が前についていますが、猿もそうでないと困る。そのわけは?
人間も500万年以上昔の先祖が猿でしたから、両目が前についています。
鏡にモノがうつる理由
はじめてだと大変難しいので、まず光の反射の復習をまずして下さい。3-4題。次ぎ
に授業書の距離の計算というところを復習してください。
では鏡の向こう側に自分が写る理由を考えましょう。
豆電球からはいろいろな方向に光が出ています。
そのうち真横に出た光やAのほうに出た光、Bのほうに
出た光がみな鏡にぶつかる。
Aのほうに出た光は鏡でどちらに反射しますか?
点線のどれが正しいですか?
Bのほうに出て鏡にぶつかった光はどちらに反射し
ますか?
質問 そこでA反射となっている光を左目で見、B反射
となっている光を右目で見たら、脳はどこから光が出たと
思うでしょうか。
脳は考えて、この光はCから来たに違いない…・ですからCに
豆電球はあるはずだ。 そこで「脳が勝手に考えると見える」のですから豆電球
がCに見えるのです。 本当の場所とは鏡の反対側ですが、みなさんが良く知っ
ている通りです。
虚像
Cには空気しかありません。 しかし豆電球はCにあるように見える。
こういうのを「虚像キョゾウ」といいます。 虚とは「何もない」「ウソ」という
意味で像ゾウは「すがた」ですから、何もないのに見えるウソの姿、という意味で
す。 鏡の向こうには空気以外何もないのに見えるのですから虚像です。
鏡に写っているのは虚像です。 何もないのに脳が間違えて鏡の向こうにある
と考えたもの(ここでは豆電球)が見えている。
-----------------------第一部 終わり------------------------------
第2部. 凹面鏡
普通の公立中学1年生にとっては大変複雑な事柄を扱いますから、典型的仮説実験授業で
なく中原式授業(理科授業論参照)を仮説実験授業形式に変換した教材を使います。 ラージ
ステップの教材を使い科学的推理と常識的推理(誤仮説)が対決するという授業でなく、極力
スモールステップにして誤仮説が極力出ないようにする。 そのほうが理論的思考を狭い範
囲に押し込める(視点を絞る)のでわかりやすい。 そのような授業・教材の短所については
理科授業論にあります。
質問 3枚の鏡を持ってきました。 これで太陽(またはプロジェクター)の光を
同じところに集められますか?
3人並ばせて実験。
問題 ここにヘンな鏡を持ってきました。 真ん中が凹ヘコんでいるので凹面鏡オウメンキョウといいます。
図に書くとこのようになり、3枚の鏡を曲げて並べたものに似ています。
これで太陽の光をレンズと同じように集める事ができるでしょうか。
1. 集められる 2. 集められない
実験の時は凹面鏡より太陽に近い側に生徒がこないように注意します。
また日向では凹面鏡を紙か布でおおって運びます。 レンズの時と同じように、紙に黒く
塗りつぶした丸をかいて、焦げるまで。
この曲がった鏡を凹面鏡つまり、凹んだ面の鏡といいます。
これを使う職業があります。 凹面鏡を持っているのはどういう職業の人ですか?
お医者さんですね。 鼻や耳、口の中に光を集めて明るくして見るのです。
光が集まる理由をキチンと復習しましょう。
凹面鏡は3枚の鏡(立体で考えると5枚ですが)に似ていますから、3枚の鏡で
考えます(立体で考えるときは前と後ろ)。
ここで入射角・反射角でなく、鏡側から測った角が等しいとする
という教え方が効いてきます。 入射角・反射角とすると図が複雑で鏡くらいならな
んとかなるが、凹面鏡では生徒が理解困難になる。 屈折を教えるとき入射角を扱
う事にします。
この光の集まるころを焦点ショウテンといいます。 焦は焦コげる点という
意味です。 ふつうFという記号にしますので光の集まったところにFとい
う字を入れてください。 レンズで光の集まる点も焦点です。
みんなで一緒に考える問題
では普通の鏡でなく、凹面鏡で顔を写したらどう見えるかを考えましょう。 鏡のように同じ大
きさの虚像が見えるでしょうか。それとも大きい虚像、小さい虚像が見えるのでしょうか。それとも曲って見えるのでしようか。 大変めんどうなので、皆で一緒に考えます。 豆電球で考えます。
Aの方向に出た光はさっき考えたように焦点Fのほうに反射します。
Bのほうに出た光は普通の鏡と同じように反射しGのほうに行きます。
そこでFの光を左目で、Gの光を右目で見たらどうなるでしょう。 豆電球は
どこに見えるでしょうか。 考えて下さい。だれかわかりますか。
ここでいいですか? そう思う人は手を上げてください。
豆電球でなく、ロウソクにすれば ろうそくの根元は写してもFと同じ高さのままのはずですからF
の横、右のほうに写るはずです。 ですから
質問 そうすると顔を写した時大きくなるのでしょうか。小さくなるのでしょうか。
わかったら実験をしますから、実験グループごとに凹面鏡を配ります。 みなで自分の顔が大
きくなる事を確かめてください。
第3部 屈折と虫眼鏡
教科書にある屈折の実験は生徒が結果を知っている場合があるので、仮説ぬき・質問だけ
で実験をします。
この紙コップの底の真ん中には赤丸をつけてあります。。
机の上の紙コップを前後に動かし赤丸がギリギリで見えないようにします。
教師がやってみせる。
水を入れると、見えないはずの赤丸が見えるようになる。
普通教室で6列の最初の生徒からやらせています。コップは水をいれるのといれないのを合わせて12個用意。
この理由は教科書や参考書にかいてありますが、復習します。
赤丸から出た赤い光は、水がない時まっすぐ進みます。 しかし水があると水
の中はまっすぐ進みますが、空気に出る時曲がってしまう。
Aのところに目があると、右のほうでは赤丸から出た赤い光がA
までくるが、左のほうではこない。だから水のない左のほうは赤
丸が見えないが、右のほうでは赤丸が見える。
プールや海で、浅いと思ったら意外に深いのでびっくりした経験のある人はいませんか?
いたら先生にわけを説明してもらいましょう。
ここに顕微鏡ケンビキョウ標本用のガラス板があります。 これを3枚重ねてノートに罫線ケイセンと直
角になるよにのせます。
ガラスは透明ですから、罫線が見えるはずで
す。
質問 では、頭を低くし、ノートとガラスを先のほ
うに出し、低く斜めからガラ
スの下の罫線をみたら、罫線はズレて見えるで
しょうか。なぜそう思いますか?
ズレるのは光がガラスから空気に出るとき曲がってしまうからですね。
このように、光が水やガラスから空気に出たり、
反対に空気から光が水やガラ
スに入る時、光は曲がってしまう。
この事を光の屈折(クッセツ)といいます。
質問の出たクラスでは屈折の理由を説明しました。
AからBに行くとき、上半分は舗装してあるが、下半分
はドロンコだとします。 そうするとAからBにまっすぐ
行くよりも、ドロンコが短くなるように左のコースにした
ほうがAに速く行ける。
光はいつもまっすぐ進むのでなく、一番速く行けるコ
ースを進む。1秒30万キロメートルというのは真空の中 A
でのスピードで空気中でも大体同じだが、水やガラスの中
では遅くなる。
質問 まっすぐ上から見た時、罫線はズレますか?
ガラスや水の面と垂直な光は曲がらない。
復習 空気からガラスに光が入ったり、ガラスから空気に光が出る時は屈折
といって曲がる。 ただしガラス面に垂直な光はまっすぐ。
この屈折を利用したのがレンズです。
レンズは平らでなく曲がっていますが、これを3つのガラスブロックにして
考える事ができます。
3本の光を考えますが、上の光はガラスで屈
折します。入るときと出るとき2回屈折しますが、面倒なので1回しか屈折しないよ
うな絵をかく習慣です。
質問があれば、2回屈折する本当の光の通り道は1回屈折のこの絵と少しだけ違うと答えて下さい。
だから光が一点に集まるというのは大体の話である。そのため写真機では何枚もレンズを組み合わ
せて一点に近くなるようにしている・・・だからカメラのレンズは虫眼鏡より値段が高い。
真中の光はガラスと垂直ですから、まっすぐ進む。
下の光は上のほうに屈折します。
ですから、レンズで光を集める事ができる。 凹面鏡の時と同じく光の集まる
ところを焦点(焦コげる点)といいます。 ただしレンズでは右から光が来るとき
も光は(左に)集まりますから、焦点は2つある。
ではレンズに近くからロウソクの光を送ったとします。
Aにゆく光はレンズの斜めから入るので屈
折するのですが、2回目の屈折でかなり曲
がった角だけもどるので、屈折なしとして図をかく習慣です。
似た図を覚えていませんか?
左目でAの光、右目でBの光をみると、ロウソクはどこに見えますか?
ロウソクの大きさは? この時のレンズを何というのですか?
ムシメガネはレンズが大きな虚像をつくる事を利用しているのです。
第4部 実像と望遠鏡
質問 レンズで遠くの景色を写した事がありますか?
なぜ遠くの景色が逆さまに写るか、考えてみましょう。
ろうそくから出た水平な光は屈折して焦点を通ります。
ろうそくからレンズの中心に向かう光は大体まっすぐ(2回の屈折が打ち消し)
すすむ。 すると2本の光はぶつかります。
その間の光もその間を通ってやはり同じところに集まる。
その光の集まったところに、紙やスリガラスを置く
とろうそくが写る。
景色でも同じ事で、景色から出た光が集まるところに紙をおくと写る。
これは本当に光があるので実像ジツゾウつまりホンモノの像といいます。
質問 実像は虫眼鏡で拡大できるでしょうか。
実験。 これが望遠鏡です。
難しい実験なので、まず紙かスリガラスに写しそれを虫眼鏡で見る。それから
紙、すりガラスを除く。
お話 実像は紙やスリガラスがあれば見えるというのはなぜでしょうか。
紙やスリガラスは凸凹です。ですから図のとおり、光をいろいろな方向に反射
します。だからどこの方向に目があっても、目に光が入る。 鏡は1方向にだけ
光を反射するので、1方向のその方向に目がないと光が入らない。
目に光が入ると、目は光が入った事を脳に知らせ、脳は何が見えたか考えます。
しかし目に光が入らないと、目は何も脳に知らせないから、脳は何が見えたか
(勝手に)考える事ができない。 だから見えないのです。
乱反射の絵は絵の下手な筆者には困難。教科書やインターネットを使ってください。
質問 凹面鏡でも実像はできるでしょうか。
図を出しても授業は成立する可能性があるが厄介だから省略していました、
質問 凹面鏡でも虫眼鏡と組み合わせると望遠鏡ができるでしょうか。
大変難しい実験なので、太陽がない方向の校外景色を薄い紙かすりガラスに写
してから、虫眼鏡で見る…・それから紙、すりガラスを除くという方法にして下さい。
先生と理科係が模範実験をやってから生徒実験。
お話 これが反射望遠鏡で、大型の望遠鏡はみな反射望遠鏡です。 レンズはガ
ラスのかたまりですから、直径が1メートルとか2メ−トルになると、物凄く重
くなって望遠鏡を動かすのが大変になる。 また自分の重さでレンズがゆがんで
しまう。 凹面鏡は鏡ですからウスッペラで良く軽く作れる。
そこで世界中の大型望遠鏡が反射望遠鏡なのです。
50年前日本最大の望遠鏡は東京三鷹にあり、凸レンズを使っていて直径65セ
ンチでした。 今の日本最大の望遠鏡はハワイの山に置かせてもらっていて、直
径8メートルの凹面鏡を使っている。
これだけ大きいと凹面鏡でも自分の重さでゆがむので、ほうぼうから棒で押し
てゆがみを修正する装置がついているそうです。
入射角、反射角、屈折角、全反射
教科書では反射を説明するとき、鏡からの角度でなく鏡に垂直な線を考え、そ
こから角を測っています。
Aの角を入射角とし、Bを反射角とし
「入射角と反射角は等しい」とします。
今まで鏡のほうから測ったCとDが
等しいとしました。
どうしてこんなめんどうな事をするの
でしょうか。 それは屈折の説明に便利
だからです。Aを入射角、Bを屈折角としますが、
そうすると、上の物質と下の物質
が同じなら、A/Bが大体一定になるという法則を高校で習うとき
便利なのです。
全反射
レーザーポインタとガラスブロックで実験をします。
質問 ガラスに入った光は全部屈折するのでしょうか。
それとも一部は反射するのでしょうか。 実験。
質問 空気からガラスに入るとき反射角と屈折角はどちらが大きいですか?
質問 ガラスから空気に入るとき反射角と屈折角はどちらが大きいですか?
図省略
入射角を大きくするとこんな感じになります。
問題 ではもっと入射角を大きくしたら光はどうなるのでしょう
ア 全部反射する
イ 反射とどういう方向かわからないが
屈折という2本の光になる。
全反射の話 入射角が大きいと100%反射します。普通の鏡は90%位。
そこで、ほそいガラスの線の中に適当な角度で光を送ると、全反射を繰り返
しながら光が伝わり、光が弱らない。
お医者さんはこの現象を利用し、胃袋の中まで細いガラス線(ガラス繊維、
グラスファイバー)の束タバと特別小さい豆電球をのどから入れて、胃袋にガ
ンができていないかどうか検査します。 線が少し曲がっても光が弱らない
で伝わるから胃袋の中が写って見える。また日本からアメリカまでガラス線
が海底を通ってつないであり、光を使った通信が行われています。