内臓の話
「細胞」と「水と油」を既習とした人体雑学です。印刷して読むだけ。
前半が退屈で完成度BかC。
水と油が既習でない場合は、構造式の部分をぬき立体分子模型を見せる事にして下さい。その場合は巨大分子の概念がありませんから、一部は「わからなくて良い」ことにして下さい。
分子概念や化合の概念が必要ですから、東京書籍など分子や化合の概念がいい加減な教科書で化合や分子を扱った場合は授業にかけないで下さい。
細胞と酸素
私たちは細胞からできていますが、どの細胞も生きているのですから、酸素と栄養を必要としています。そして全部の細胞が二酸化炭素などいらないものを捨てています。
私たちは口や鼻から酸素を吸い込み、口や鼻から二酸化炭素を出します。 まず酸素はどこに入るか知っていますね。肺です。
肺から全身の細胞に空気を運ぶ管はありません。 全身をまわっているのは空気でなく、血液です。 ですから血が酸素を運ぶのです。 「細胞」で勉強したように、赤血球という酸素を運ぶ専門の細胞がある。 英語はred blood cell「赤い 血液 細胞」です。 標本があれば顕微鏡で見てみましょう。
肺の中の酸素は血の中に入りますが、肺のまわりをベッタリ血が流れているわけではない。それでは血がしみだしてしまう。 肺には多数の細い血管つまり血の通る管がきています。教科書で図をみましょう。 血管も細胞からできていますが、酸素分子や二酸化炭素分子が通るような大変細かい穴があり、血管に酸素が入ったり、血管から二酸化炭素が出るようになっています。
質問があれば、酸素や二酸化炭素の分子は通るが大きさが同じ水分子はどうなるか教えます。水蒸気は通るが液体の水は通らないから血がしみだす事はない。最近は小さい穴か液体の水は通さないか゜水蒸気/湿気は通すという原理を使った雨具が普及しています。 ゴアテックス、エントラント、高密度織物などの高級雨具です。
赤血球の中にはヘモグロビンという赤い分子がありますが、ヘモグロビンは酸素の特別多いところ(肺)では酸素と化合し、酸素の少ないところ(全身)では酸素を離してしまう。 酸素と化合したヘモグロビンは真っ赤です。 ですから肺から心臓を通って全身に行くほうの血液は真っ赤です。 全身から心臓や肺に帰ってくるほうの血液は赤黒い色をしていますが、これがヘモグロビン分子のもともとの色です。
怪我をしたとき、真っ赤な血が出るときと、赤黒い血がでるときがありますが、肺・心臓から出るほうが真っ赤、帰るほうが赤黒い。
酸素を運ぶのにはヘモグロビンという酸素と弱く化合する分子が必要ですが、二酸化炭素のほうは水によく溶けるから、運ぶための分子はいりません。 炭酸飲料というのがありますね。
心臓
心臓は血液を動かすポンプです。 運動をして酸素をたくさん使うと、心臓がどきどきしますが、心臓が足腰や腕にふだんより多くの血を送っているのです。
心臓は肺に血を送りそこで二酸化炭素を捨てて酸素を取り入れる。 肺から酸素の多い血液が心臓にもどる。これで1つのポンブです
その酸素の多い血液を全身に送る。 全身から二酸化炭素だらけになった血が戻る。これも1つのポンプです。
心臓は2つのポンプからできているのです。 では教科書の絵をみましょう。
動脈とは心臓から出る血管のことで、心臓が膨れたり縮んだりして血液を送り出す1分45-85回(個人によって違う)回の振動のため、血管に手をあてるとドキッドキッと動いている。 その血は全身に送られ、どの細胞にも酸素が与えられるように細かい毛細血管を通る。そのあと二酸化炭素を受け取った血液は太い血管に集められるが、もう振動の勢いはなくなり、静かに血液が流れる。 それで心臓にもどってくるほうを静脈ジョウミャクという。 男子はうでに血管が青く見えることが多いが、静脈です。
運動の多い人は心臓がよけい働くので、若いうちだと心臓が強くなり、1回の伸び縮みで多くの血液を送ることができるようになります。 ですから休んでいるとき「脈」の数が少なくなる。 1回で多くの血液を送れば回数は少なくても間に合うからです。
赤血球とスポーツ
私たちはいつも酸素を使っていますが、特別酸素がたくさんいる時があります。 ハアハアと空気を吸い込むときです。 運動をすると、足腰や腕の細胞がたくさん酸素を使ってしまうので、酸素が足りなくなるから呼吸回数を増やす。
赤血球が酸素を運ぶ。 それなら赤血球が多ければ、足腰や腕の細胞に酸素をたくさん運ぶ事ができるから、運動のとき息切れしなくて有利ではないでしょうか。
多くする方法の1つとして、血を少し抜いて冷蔵庫に入れて置き、不足分の血を体がつくったころ、冷蔵庫の血を注射するという方法があります。 注射してすぐ試合に出ると息切れしにくくなり、有利とされている。血液ドーピングといって現在では禁止されています。
しかしもう一つ赤血球を増やす方法があり、それは禁止でない。 高原で練習すると高原は空気が薄いので人間の体は赤血球を多く作って酸素不足にならないようにします。 ですから高原で練習すると赤血球が増えて、マラソンなど長距離では特に有利になる。
マラソンではエチオピア、ケニア、タンザニアなど東アフリカから名選手が多数でていますが、これらの国は国土の大部分が2000m位の高原です。 昔東京でオリンピックがあったとき、エチオピアの選手が2連勝しかも2回目には2位を1600mも離したので、学者以外の人たちも高地練習の効果におどろき、今では世界中で高地練習が行われています。
筋肉
運動のときは、筋肉を伸ばしたり縮めたりします。 だせる力は筋肉の太さに大体比例します。 ですからレスリング選手だけでなく、水泳選手や陸上選手も筋肉マンです。
昔千代の富士という体は小さいのに大変強い横綱がいました。優勝回数31と大鵬32回の次です。 千代の富士の筋肉は260キロの小錦とほとんど同じだけあったそうです。 ですから小さくても力は強く、千代の富士にまわしを取られた力士はたいてい体が浮き上がってしまいました。 小さいから敏捷であり相撲が速い。 速さと力の両方で優れていたので抜群に強かったのです。
残念ながら小さいのに強い現代横綱の朝青龍のデーターは見ていません。
誰か知っていたら書き換えて下さい。千代の富士と同様なはずです。
筋肉をふやす薬品があり、禁止ですから見つかってオリンピック優勝メダルを取り上げられる事件がある。 野球や相撲などでも最近は問題になっています。
肺
肺魚という肺をもつ魚がいます。 亜熱帯の雨が多い季節(雨季)はふつうの魚と同じような生活をしているが、雨が少なくなり沼が干上がる季節(乾季)になると、穴に入ってじっとしています。
亜熱帯ではたいてい雨季と乾季がある。沖縄は例外。
肺魚は肺で空気を吸うとき、穴でじっとしているのですから、とりいれる酸素は少なくて良い。
このわら半紙をくるっと巻いたものが肺魚の肺だと思って下さい。肺はただの袋でまわりを毛細血管がとりまいている、つまりこの紙の外側に血が流れているとおもって下さい。 人間の先祖の魚もこのような原始的な肺しかなかったはずです。
では紙をくしゃくしゃにして丸めます。 このとおり体積が小さくなりました。 面積は? おなじですね。 つまり体積のわりに広い面積から酸素をとりいれる事ができる。 人間や犬、猫、鳥など新しい動物は、このような性能の良い肺をもっています。
教科書の絵をみましょう。
デンプン(澱粉)とブドウトウ
ごはんやパンにはたくさんのデンプンがふくまれています。 これらを20秒ほどかむと少し甘くなりますから、おべんとうをちょっとだけ出して実験してみましょう。強制はしませんが…。
なぜ甘くなるのでしょうか。
図(「水と油」にあり)をみて、ブドウトウとバクガトウを比べてみて下さい。
ブドウトウが2つくっついているのがバクガトウです。 ブドウトウが無数につながるとデンプンになる。 ジャガイモのデンプンを片栗粉といい、白い粉ですが、その粉1個が1つのデンプンの分子です。 普通の分子は小さくて見えないので、普通の分子と区別するときは巨大分子と言っています。
では先生からグループ(列、班)ごとに、ブドウトウの包みをもらい、全員で仲良くわけてなめて下さい。 甘いが砂糖ほどしつこい甘さでなくあっさりしています。
唾液(タ゚エキ、つばの事)の中にある消化酵素はデンプンを分解してバクガトウにし、最後はブドウトウにします。 だから甘くなる。
口の中で変わるのは一部で、大部分は小腸という場所でブドウトウになり、そこから血液の中に入ります。 教科書の絵をみてください。 口から胃袋、その先に小腸がある。 小腸の細胞にも穴がありブドウトウ分子を通す。
そして外側にある血にブドウトウ分子が入り、からだ中をブドウトウがまわる。
そして細胞が酸素と栄養を必要とする、といいますがその栄養の中で一番重要なのがブドウトウです。 細胞はこのブドウトウを栄養にして生きている。
人間が走れば足の筋肉の細胞で大量のブドウトウが使われ、考えれば脳みその細胞で大量のブドウトウが使われます。
そこでマラソン選手が走る最中に飲むジュースの中にはブドウトウと塩が入っています。 汗をかくから、汗で出た分の塩も入れておく。
ブドウトウは消化する必要がありませんから、ブドウトウの入ったジュースを飲むとブドウトウは胃袋の壁の細胞を通りすぐ血液に入ります。だからすぐ選手の走るエネルギーになります。 自動車はガソリンを燃やして走るが人間はブドウトウを燃やして走るといって良いでしょう。 ブドウトウを酸素のあるところで少しづつ分解して二酸化炭素と水にすれば、燃やしたときと同じ熱が少しづつでます。 携帯カイロで鉄と酸素が化合すれば鉄が燃えるときの熱がゆっくりでるようなものだと思ってください。 運動をすればブドウトウを大量に使うので熱が激しく出て汗をかく。
ブドウトウや砂糖を大量に食べるとどうなるか
消化する必要がなく、すぐ体の中に入り細胞が使えるという食べ物がブドウトウです。 ですからブドウトウのあまりはきびしい部活動の人にあげて下さい。部活動のとき、水を飲むついでにブドウトウを食べると良い。
小さい子どもが遊びくたびれて夕飯をたべないで寝るとブドウトウがたりないため、朝ぐったりしてしまう事があります。 そういう子どもをお医者さんのところに運ぶと、医者はブドウトウを水(薄い食塩水)に溶かして注射する。 子どもはたちまち元気になります。
ではご飯やパン、うどん・そばなどの代わりにブドウトウを食べたらどうでしょうか。 すぐ元気がでて良いのではないでしょうか。しかし困る事がある。
血液のブドウトウが多いと、その一部は肝臓(教科書の絵をみてください)に貯蔵されますが、それでもあまると脂肪に変えて貯蔵されます。 ですからふとりやすくなる。 砂糖もブドウトウほどではないが消化吸収が速いので、砂糖をたくさんとると、ふとりすぎになりやすいのです。
ご飯やパン、うどん・そば、などのデンプンは分子が大きくて細胞の穴を通りません。 そのデンプン分子を少しづつ消化酵素がブドウトウに変えてから吸収されるので、血液の中のブドウトウはそれほど濃くならず、肝臓にたくわえる程度で終わるのが普通なのです。
ご飯やパン、うどん・そば、などでも一度にたくさんたべるとブドウトウがあまり、脂肪ができます。 ですから1日二食だと一時に多く食べるからふとりやすい。 ふとりたい人は1日2食が良い。 おすもうさんは1日2食です。
脂肪の役目
山の遭難や飛行機の山中ついらくで、何日も食べない場合、やせている人と肥っている人ではどちらが長生きするか知っていますね。 もちろんふとった人です。 脂肪をすこしづつブドウトウに変えてブドウトウ不足をしのぐ事ができる。
脂肪は1グラムあたりブドウトウの2倍以上のエネルギーを出すので、貯蔵には向いているのです。しかしブドウトウに変わるのが遅いから激しい運動のときはほとんど役に立たない。 何時間も歩くという程度の運動だと脂肪も使われます。
甘いものをたべると元気がでるわけ
ブドウトウを食べれば元気になるわけは簡単です。 でも砂糖でも食べるとすぐ元気になるのはなぜでしょうか。 砂糖が体に入ると脳みそは「もうすぐブドウトウが増えるから、予備のブドウトウを使っても大丈夫」と判断し肝臓にあったブドウトウが血の中に出るのです。
正確にいうと肝臓にあるのはグリコーゲンといってデンプンと同じくブドウトウがつながった巨大分子です。
たんぱく質とアミノ酸
肉、魚、卵、豆などはたんぱく質が多い。 これらのたんぱく質はデンプン分解のときとは違う消化酵素の働きで、アミノ酸に分解される。 アミノ酸は小さい分子つまり普通の分子ですから、小腸の細胞の穴を通りまわりの毛細血管に入る。 そして細胞をつくる材料となります。
細胞の中にある別の酵素の働きでアミノ酸の種類を選びながら順序正しくくっつけ、人間のたんぱく質を作る。
カビにも酵素があり、たんぱく質をアミノ酸に分解する事ができる。 ですから醤油とか味噌はカビの酵素で豆のたんぱく質をアミノ酸に変えたものです。だから旨みがある。 たんぱく質の一部は煮ただけで分解しますから、肉やにぼし、シイタケやコンブなどを煮た汁にもアミノ酸が多い。
肝臓
一つの役目はブドウトウの貯蔵です。 もう一つの役目は人体の化学工場だという事です。 有害な分子は無毒な分子に肝臓で変えられる。 例えばお酒のアルコールは肝臓で二酸化炭素と水に分解される。 ですから飲みすぎだと、肝臓が悪くなって早くお墓行きになる。 日本人には肝臓の中のアルコール分解の酵素が生まれつき少ない人が西洋人より多く、そういう人は大変酒に弱い。 そういう人はさかずき一杯で酔っ払い、あまり飲ませるとそのまま死んでしまう事もあります。 お酒は酔っ払いにならない程度が安全で、それならお墓が近くなることはない。
よっぱらう時の血の中のアルコールの濃さは誰でも大体同じです。 酒に強い人はその分解酵素が多くてさっさとアルコールを分解すると同時に、血の中のアルコールをおしっこのほうに速くまわしてしまう人です。 つまり酒に強い人とは大部分のアルコールをさっさと分解したりさっさとトイレに捨ててしまうという、もったいない?事をしている人です。
腎臓
人体の清掃工場です。 アルコールだけでなく血の中にあるいらないもの全体を集めて尿つまりオシッコにする。
腎臓が悪くなると、いらない物質(分子)が血の中にたまりその中には毒のあるものもあるから、昔は1週間位で死んでしまいました。 最近では人工腎臓ができ、そういう人も死なないようになりましたが…。
いきなり濃い尿をつくるのは難しいので、まずうすい尿をつくり、それから水を抜いて濃い尿(普通の尿)を作っています。
ぼうこう
腎臓は24時間働いていますから尿(オシッコ)は24時間作られています。 これを外に管で出したらどうなるでしょう。 24時間たれながしになってしまう。 ですからタンクが必要で、タンクが一杯になったらまとめてトイレで捨てる。そのタンクがぼうこうです。
大腸
ブドウトウやアミノ酸は小腸で吸収される、つまり小腸で血の中に入りますが、残りはドロドロのままです。 その水はもったいないから、大腸で吸収します。そしていらないものだけを肛門から出しトイレで捨てる。
目
教科書の図の通り、目には透明な細胞でできたレンズ(水晶体)があって、実像が目の中にできます。 そこを網膜という。
そこには光を電気に変える細胞があって、その電気が神経を通って脳につたわります。 つまり目とは人体のテレビカメラです。 その脳につたわった電気から脳は何が見えたか判断する。 ですから途中の神経が切れると盲目になる。
図のように光を電気に変える細胞のない場所があり、そこに写るものは見えない。 しかし目玉を動かすから見えるような気がする事は1年で勉強したとおりです。
また虚像は目の中で実像になりますから、興味のある人は1年の復習をしてみて下さい。
最近光を当てると目の網膜の細胞と同じ電流を発生する機械が作られ、目が見えなくてもその機械を目につなげば見えるという実験に成功しました。ただし水晶体が濁って目が見えないだけなら、それを凸レンズと取り替えれば見えるようになりますし、角膜という外側の透明な膜が濁っている人はそれを死んだ人の角膜と取り替えれば見えるようになりますから、病院ではレンズ交換や角膜交換をやっています。
耳
教科書の図のとおりで、耳たぶで音を集め、鼓膜コマクという膜が振動するとそれがかたつむりのような形をしたものに伝わり、振動が電気に変えられやはり神経を通って脳に送られ、脳は何が聞こえたか判断する。 耳は人体のマイクロフォンです。
鼻
鼻には匂いの分子があると、発電する細胞があり、やはり神経をとおってその電気が脳につたわります。
犬は匂い分子があると発電する細胞が人間よりずっと多いので、匂いの感覚に優れています。 それを利用したのが警察犬で、警察犬は殺人犯の匂いをかぎわけたり、密輸犯の隠し持った麻薬を見つけたりします。 猫もかなり良く、ロシアではキャビア(チョウザメという魚の卵)の密輸を発見する警察猫がいたそうです。
人間は動物の中で鼻が悪いほうです。目は良いほうですが。
口
舌には味を感じる細胞が6種類あり、それぞれ甘さ、苦味、塩辛さ、辛さ、すっぱさ、旨味を感じて発電し、やはり電気が脳に送られます。
皮膚
皮膚には痛さを感じる細胞、冷たさを感じる細胞、暖かさを感じる細胞、触ったという感じを感じる細胞があり、やはり発電して電気が神経を通り脳につたわります。
手品師が手に針を突き刺すという気持ちの悪い手品がありますが、痛さを感じる細胞がなければ痛さを感じません。 その場所をよく覚え正確にそこを刺すというのが手品師の技術です。
指には痛さを感じる細胞が大変多いので、指の傷は小さくても大変痛い。背中やお尻には痛さを感じる細胞が少ない。腕でもわりと少ない場所があり、お医者さんや看護婦さんが注射をする場所になっています。
脳、反射については山本さんの授業書「心理学入門」を使用して下さい。 時間がなければ最初のところだけキチンとやれば良い。この授業書は面白さと理解率を上げるために入っている部分がかなりあります…普通の授業書はそうなっている・・・ですから一部を抜いても面白さと定着率が下がるだけで授業が成立します。