「モーターと発電機」試作品
何回も授業にかけていますが、生徒評判・テスト結果の悪い授業書で、重大な欠陥があります。 しかし独自の工夫はあり、牧さんのヴィデオに見られる工夫と重ならない事が多いので、両方の内容を結びつけるとまともなものになる可能性があるとして「試作品」としました。 容易さ完成度ともに最低ランク。
「電流と磁石」既習として教科書の内容置換を目指したのですが、仮説実験授業では生徒が仮説を考え得るレベルまで理論水準をあげる必要があるので、教科書置換の授業書は一般の授業書より作り方がずっと難しく「実験をやって解釈を上から押し付けるという指導要領準拠授業より、理論連続のためさらに苦しい」授業となりやすいのです。
以下の実験は新しい磁石ならたいてい大丈夫なのですが、古いありあわせの磁石を使うときは必ず予備実験をして下さい。 2つの磁石の実験では強さが違うと実験結果がこのに通りになりません。 また磁石によって距離も適当な距離がある。また鉄片の材質によって残留磁気が強いときと弱いとき、ほとんど残留磁
気がない事がある。 また実験に使う鋏の材質の問題もある。すべて予備実験をして下さい。 指導要領準拠授業と異なり仮説実験授業は実験が失敗すると大変な事になるのです。 また図(昔図画工作が2でしたから大変下手です)は模式的なものですから予備実験のあと、理科室にある磁石の場合に合うように図を書き換えて下さい。
コイルの磁場の復習
「図のようにコイルに矢印のように電流を流したらコイルのどちらがNになるでしょうか」という復習をする。 1ケ所で電流のつくる磁場を考えれば良い事を教える。 そのあと教科書のように手の形で判断する方法を教える。 原理的に考えるより簡単であり、「フレミング左手の法則」と異なり高校での混乱の原因にならないから授業書が終わってからなら教えてもよかろう。
棒磁石に鉄片をつけたらその鉄片からも磁力線が出ると思いますか?
実験すると鉄片からも磁力線が出ています。 鉄片は磁石になったのです。
教師が模範実験をしてから生徒実験 メーカーのつけた鉄片の厚みがたいてい不足なので2つ重ね てテープで接合しておく。
針を持ってきました。 この針を棒磁石(U字磁石)につけて磁石にしてからビーカーの水に浮かせたらどうなると思いますか? 鉄は水より密度が大きいのですが、水には表面張力というものがあって、多少の重さなら支える働きがあります。 まずろ紙の上に針を置き、そのろ紙をそっと水に浮かべます。しばらくするとろ紙は水に沈みます。
コツがいるから教師が模範実験をしてから生徒実験
方位磁石は針を磁石にしたもの
針の向いている方向は東西南北のどれとどれですか? これが方位磁石の原理です。 地球から出る磁力線のため針の磁石が動く。
棒磁石に釘をつけると釘は磁石になります
では棒磁石にくっついている時の釘とはなした後の釘では磁力の強さを比べて下さい。 事務室から借りてきたクリップが何センチ位何ミリ位でつくか調べれば良い。 結果は どうですか?
磁石につけた鉄が磁石になるわけ
鉄は原子がもともと磁石です。でも磁力の方向は出鱈目なので、互いに打ち消しあって磁力がなくなってしまう。 ところが棒磁石の磁力線が鉄を通ると、方位磁石と同じように向きを変えて小さい磁石が整列します。 だから磁石になるのです。
磁区の話を入れたほうが正確だが、いれてもややこしいだけで生徒の世界がひろがるわけでないと考え扱っていない。 授業で僕の書いた図はあまりにもひどくて出すのは気が引けるから図が必要ならインターネットから「磁区」で入手して下さい。
しかし通る磁力線がなくなると磁力の向きはある程度もとの向きにもどってしまい、互いに打ち消しあうので弱い磁石になってしまう。 強い棒磁石やU字型磁石がスピーカーやメーター、マイクロフォン、自転車の発電機などに使われていますが、それらの磁石に使う鉄は特別なまぜものがしてあり、一度磁石になったら磁力の方向がほとんどもどらないようにできています。
ふしぎな磁石の力比べ
フェライト磁石を持ってきました。 フェライトは酸化鉄でできていると思って下さい。 安いわりに強力な磁石ですから、スピーカーや発電機にもよく使われています。 クリップは「 」cmはなれてもつきます。
こちらは鋏です。 磁力はほとんどありません。 ほとんどくっつけるところまで近づけないとクリップは吸い付きません。
ではフェライトにつけたクリップに鋏をつけ磁力の力比べをします。 ふしぎな事に鋏のほうが勝ちました。 手品でない証拠にもう一回やってみましょう。先生がインチキをしていないかよくみていて下さい。
どうして弱い磁石の鋏が勝つのでしょうか。
全部の磁力の方向が揃えば,鉄のほうがフェライトより強い磁石になるのです。ですから、鋏はフェライト磁石の近くでフェライト磁石の磁力線が通っているときだけフェライト磁石より強い磁石になっているのです。
この実験は材質にもよるので予備実験。力比べもちょっとコツがあり予備実験を。
フェライト磁石は磁石を作るときに通した磁力線がなくなっても磁力がほとんど落ちないので、たいていの鉄よりは残った磁力が強いのです。 (この面白い実験は30年前板倉さんに教わりました)
2つの磁石のつくる磁場
このように2つの磁石を並べた場合、磁場はどうなると思いますか。
ア A図のように1つの場合を重ねたような磁場になるだろう
イ B 図のように磁力線はよけあって重ならずA図の場合より少しせまい所を通るだろう
ウ 重なった磁力線は消えてC 図のように残りがつながるだろう
実験するとBが正しい事がわかります。 磁力線はよけあい、狭い場所に集まります。 ただし相手から遠い磁力線は相手の磁力のほうがずっと弱いから磁石1つの場合と同じです。
狭いところに押し込められて濃くなった磁力線はもとの濃さ(A図のような磁場)にもどろうとします。 それには相手の磁石に向こうにいってもらわないといけない。 だから反発するという事です。
なぜ磁力線の濃さがもどるように力が働くかという理由は難しいので大学理学部や工学部で勉強します。
このように2つの磁石を並べた場合、磁場はどうなると思いますか。
ア D図のように1つの場合を重ねたような磁場になるだろう
イ E 図のように磁力線はよけあってせまい所を通るだろう
ウ 重なった磁力線は消えて残りはC 図のようにつながるだろう
実験するとウが正しい事がわかります。 反対方向の磁力線は打ち消しあって消えてしまい、残りはつながってしまいます。 磁石に近いところは1つの磁石の時とおなじままです。
磁石の間の磁力線は大部分消えてしまいました。 そうすると、磁力線が今まであったのに消えたので、以前と同じ磁力線の濃さにするには磁石がもっと近づいて薄いところを無くそうというので磁石はくっつくと考えられます。
では電流のつくると棒磁石のつくる磁場の組み合わせではどうなるでしょう。 図のように、棒磁石を下に置き、平らな銅線(アルミ箔…)を吊るして電流を流します。
大変厄介ですから、少し援け舟を出してから考える事にしましょう。
電流のない時の棒磁石の磁力線を書いて見ましょう。 磁力線はNから四方八方にでています。 ア図。
次に棒磁石がない場合の電流の磁力線を書いてみましょう。 時計回りに磁力線がまわるのでしたね。イ図。
では仮に両方を一緒に書いてみましょう。 ウ図。
反発が起きそうな場所はどこですか?
引っ張り合いそうな所はどこですか?
そうすると、銅線(アルミ箔…)が動く方向は?
では実験して見ましょう。 予想どおりになります。
このときま磁力線はエ図のようになります。 逆の磁力線は打ち消してなくなり、同じ方向の磁力線はこみあって通ります。
動く方向は電流にも磁力線にも垂直な方向ですがわかりますか?
塾ではフレミング左手の法則という暗記方法で動く方向を知るように教えるのが普通です。 しかし暗記方法では応用がきかず、高校では似た名の暗記方法が別にでてきて間違えやすくなります。 ですから高校大学で物理(理科第一分野の半分)を勉強しない人はフレミング左手の法則で動く方法を決めても良いでしょう。 高校大学で理科を勉強する人は理屈で動く方向を決めるほうが良いと思われます。
以下、磁石のNSと電流方向を変えた演習をする。
スピーカーの原理
スピーカーはテレビやアンプなどの中で流れている電流を音に変えます。
スピーカーを横から見ると、左の図のように磁石から出る磁力線の中にコイルがあるのが分かります。 上から見ると磁石は真ん中の絵のようになっています。
このように磁石とコイルがあり、電流を流すと動く方向は電流と磁力線の方向の両方に直角ですから、右の図で考えればコイルは前・うしろに動くはずです。 左の図では上下に動くつまりスピーカーの外側・内側に動く事になります。
では1列づつ先生の机まできて、スピーカーに電池で電流を流し、電池を逆にすると動く方向が反対になる事を確かめましょう。
教師の目の前で生徒が実験。他の生徒には紙に書くゲームを許可し内緒話程度で実験中の生徒に迷惑でなければ話もよろしいという事にする。 音が出て生徒の喜ぶ実験です。
モーターの原理
電流を流すとものが動く。 それを利用したのがスピーカーですが、モーターもそうです。
では教科書にあるモーターの原理を勉強しましょう。
以下図を使って前節と同じ方法で考えるのだが、あまり厄介だから2段階で教える。 まず整流子なしの場合をやって生徒に回ると予想させておき、実際にやるとゆれるだけですぐ止まってしまうのを確認する・・・つまり整流子を除いた模型モーターを用意して実験をする。
これでは半分回転すると電流の向きが反対になってしまうので、逆回転をはじめてしまいます。 実際のモーターでは整流子という部品を使って半分回転のとき電流の向きがまた同じになるようにしています。
それから整流子の説明をして模型モーターを動かす。
電磁誘導と発電機の原理
あまり面倒なので、予想させると一部優等生のほかは自信がなくなる危険があると考え、お話としている。 既製コイルと電流計、強力な棒磁石を生徒に渡す。 いまコイルに棒磁石をサッと近づけます(模範を示す)。 そうすると発電しますから実験してみて下さい。
どうしてでしょうか。 それはコイルが天邪鬼アマノジャクの性質をもっているからです。 天邪鬼って知っていますか。何にでも反対するという魔物マモノです。
いままでコイルの中には磁力線がなかったのに、新しく磁力線が通った、ではオレがそれを打ち消してやろうとコイルは電流を作ってその磁力線で打ち消しをやるのです。 図ではコイルに矢印のように電流が流れると棒磁石の磁力線打消しになりますからそう発電します。
では棒磁石をコイルに近づけておいてサッと離します。 するとまた発電しますが、電流の方向は? 反対ですね。
コイルは天邪鬼ですから、いままで磁力線があったのになくなったのは怪しからん。 オレがかわりに磁力線を作ってやると反対します。 磁力線がなくなったのなら、コイルが発電して磁力線を作ってやるというのです。 その結果さっきとは反対に発電するのです。 コイルがなぜ天邪鬼の性質を持っているかは難しいので大学の理学部や工学部で勉強する事になっています。
演習は図での発電方向を知らせておいて、NSが反対とか近づく場合と離れる場合という問題にして、NSが反対・近づく離れるが反対の場合は電流も反対という事がわかれば解けるやさしい問題とする。 図だけから電流方向の推定をすると、面倒すぎて一部の優等生しかついてゆけない。
発電機と交流
コイルに磁石をちかづけたり離したりすると電流の流れる方向は磁石が近づいたり、離れたりすると反対になりますから、プラスとマイナスが切り替わる電流ができます。 そのような電気を交流といいます。
教科書にある自転車の発電機を見ると、コイルと磁石が近づいたり離れたりしますから、自転車の発電機からできる電流は交流でプラスとマイナスが切り替わっています。
オモチャのモーター・発電機があればそれとその絵でもよい。
発電所にも巨大な磁石と巨大なコイルがあって、同じ原理で発電しています。
ですから私たちの家庭にくる電気も交流でプラスとマイナスが交代する電気です。
シンクロスコープ(トリガ式オシロスコープ)があれば、発電機の電気と電池の電気を見せてもらいましょう。
シンクロスコープは直流や周波数が一定でない交流にも対応していますから、普通のオシロスコープと違い、こういう場合に役に立ちます。 ただし予備実験で電圧利得や鋸状波の走査時間を加減しておいて下さい。
モーターと発電機の構造は大体同じ
モーターはコイルと磁石で電流を運動に変えます。 発電機はコイルと磁石で運動を電気に変えます。 だから電池で動かすオモチャのモーターはそのまま発電機にならないでしょうか。 電流計とモーターをつないでモーターを手でまわすとこの通り発電します。
モーターが多数あれば生徒実験。なければ1列づつ呼んで演示。
ではスピーカーも紙をうごかせば発電するでしょうか。 このとおり発電します。 人間の声で紙がほんの少し動くと電流が少し流れるはず…つまりスピーカーはマイクロフォンとしても使えます。 マイクロフォンが足りないときはスピーカーをつないで、その前でしやべれば良い。 スピーカーは電流をコイルと紙の運動に変え、音にしますがマイクロフォンは音をコイルの運動にして電流に変えるのです。
1列(班、グループ)づつ教卓に呼んで実験をみせる。
レシーバーは小さく作ってあるだけで構造はスピーカーと同じです。ですからレシーバーもマイクロフォンとして使えます。
ではマイクロフォンはスピーカーになるかって? マイクロフォンは人間の声(ほんの少しの空気の振動)で動く程度しかコイルが動かないようにつくってありますから、スピーカーのように大きく動かすとこわれてしまいます。 大変小さい音にすれば大丈夫でかすかに音が聞こえますが、こわしたらオカネがかかるので実験はしない事にします。