指導要領準拠授業の中の無駄時間を無くす
                       
短縮したい指導要領準拠授業
 たいていの指導要領準拠授業では、
1 指定された実験をグループ毎にやらせ、
2 「結果発表」をやらせ、
3 話し合いがあってもなくてもそのあと教師が「何がわかったか」まとめて示す、
という授業の段階があります。

 結構時間がかかり、中学1年や2年では指導要領・教科書内容の「積み残し」をするのが普通であり、3年での理科授業4時間(1.2年は3時間)を利用して何とか教科書が終わるという事になる。

 僕の推奨する短縮した指導要領準拠授業では
1. 「これから、つまらなくてわかりにくい授業をするが、受験のためだから我慢してほしい」とまず生徒に頭を下げておく。
2. こういうルールについてのこういう実験がある、という話。 「何がわかったか」生徒に尋ねるのでなく、はじめからすべてを押し付けてしまう。
3. 実験グループ代表者に実験(またはその一部)を見せる。そのあいだ他の生徒は紙に書いたゲームをしている。
4. そのあと生徒の自由グループ毎に実験。 結果発表の時間がなく、また生徒の実験間違いの後始末も稀なので、代表者に実験を見せる時間を入れても、全体の時間は大幅に短縮されます。
 テスト前に市販テスト類似テストをやってルールを復習暗記させます。
 
「考える」時間はなくてよいのか?
 大多数の指導要領派のいう「生徒が考える」という授業過程は、仮説実験授業で仮説を考えたりそれを批判する時に「生徒が考える」過程と本質的に異なっています。 以下のように形式的には生徒に「考えさせる」ように見えますが、実際には大衆生徒にとって無意味・退屈な茶番劇の時間、不快な押し付けをされる時間にすぎないから、カットしたほうが良いと思われます。
   科教協の有力教師である玉田氏、中原氏らの授業や、指導要領派の中でもごく少数教師の授業では仮説実験授業の場合と同様の生徒思考になっています。 
  
 いま例として「てこ」についての指導要領準拠授業の大多数と仮説実験授業の「トルクと重心」の授業構造を比較しましょう。
 実験のあと、プラス仮説(「てこ実験器の目盛りの数と錘の数をプラスしたものが釣り合う」)が多数派で掛ける仮説「てこ実験器の目盛りの数と錘の数を掛けたものが釣り合う」が少数派なのは指導要領派授業でも仮説実験授業でも変わりません。 そのあと仮説実験授業では両方の仮説の対決実験が教師指定(授業書で指定)となり実験が終わったあと、「ワーッ」「畜生!」という声と同時に全生徒がルールを理解する。

 ところが指導要領式授業では、大多数のグループからプラス仮説、少数のグループから掛ける仮説が出たあと、教師が「プラス説では説明できない例がある」と発言し(実験を見せる場合もある)、掛ける仮説のほうがルールだとまとめてしまうのです。 ですから全実験グループ毎にテープレコーダーを置くと「あれは例外だ」「そうは思わないけどなあ」という声,つぶやきが入っています。 自分たちの実験はすべてプラス仮説で説明できたのですから、そういう生徒がいて不思議でないでしょう。

 大多数の指導要領派授業が押し付けである事は、指導要領準拠少数派の授業と比較するともっとはっきりします。 それらの授業では、まとめる事なく「どちらが正しいかわかるような実験」を考えさせていました。 ですから次の時間の授業は仮説実験授業とそっくりなのです。 ただし全体の時間はよけいかかる。
 他の題材でも、同様です。

 つまり指導要領準拠・教科書準拠の実験はたいてい焦点絞りが不十分なので、ルール候補が複数残ってしまい、それをまとめるという教師作業が無茶押し付けになっています。 どうせ無茶押し付けなら、はじめから「受験のため」と断って最初から押し付けたほうが、時間はずっと短くまた自分が折角考えたことを教師説教で否定されるという不快さもない。

 指導要領・教科書の実験説明そのものが無茶苦茶な事もかなりあります。例えば中学での光合成を水草による二酸化炭素吸収とBTB変色で説明する実験は、他の理由でBTBが変色しても説明できるわけだから、「考えさせて教科書どおりの説明をさせる」など飛んでもない事で、「権威の書いた事を調べてそれに従う」(優等生)「わけがわからなくても自分から権威に従う」(大衆生徒)態度の養成です。そういう時は最初から「教科書ではこう説明しているから入学試験や業者テスト、塾ではそういう事にしておけ」と押し付けて反道徳的授業を回避します。 
 このように指導要領や教科書がおかしい場合、「無競争集団主義」「酒井式行事」「仮説実験授業」の併用で教育された生徒たちは、しばしば教科書どおりの説明に納得しない事があり、「教科書や指導要領が間違い」だと言わざるを得ないようになります。 

間違い実験を防止する方法
 仮説実験授業や科教協名教師授業のように仮説対決があれば、仮説のどれが正しいか判定に必要な程度には生徒が実験前に実験の意味を理解しています。 実験についての指示がなぜ必要なのか十分わかっているから生徒実験の場合でも指示違反は稀です。

 ところが大多数の指導要領準拠授業では、実験をしてからルールを実験結果から抽き出すという構造になっている。 ですから予習をしないかぎりなぜ教師指示や教科書にある諸注意が必要なのかわからず、指示や注意が左耳から右耳に抜けてしまう、という理由で間違い実験が多くなります。

 最初にルールと指導要領・教科書にある説明を押し付けてしまえば、実験の意味のわかる生徒がある程度出てきますから、それだけでも間違いは減る。
 実験全部または一部を教師がグループ代表者に見せて置けば、間違い実験は稀になり、教師の巡視が楽になりますから、実験そのものに要する時間が短い場合は教師実験…生徒実験という順にしておく。 そうすると数少ない間違い実験をした場合でも生徒のほうから呼びにくる。結局そのほうが授業時間が短い。
 また電気回路では、回路図と同じ形に、電池・ランプ・抵抗・メーターなどを配置してからコードをつなぐようにする。
まあ2/3程度の授業時間にはなるでしょう。