この運動が成立する必要十分条件は次の通りである。つまり以下の
3条件がなければ問題児とつきあう生徒有志運動は発生せず、条件があれば運動は例外なく成立した。
1 生徒遊びグループが十分大きく、問題児集団の暴力を恐れる必要がない。
2 生徒全体の意向を忠実に反映するリーダー会議の成立
3 生徒大多数が教師に陰に陽に協力するだけの教師支持
 23の条件は仮説実験授業、酒井式行事、「契約」のための授業、「昼食座席自由」「学活と理科あまりの時間のトランプ」「理科授業座席の自由」「授業座席の自由」や行事の契約などの効果で、よほど大荒れ学年でなければ春か初夏には成立する。

 問題は1の成立で、1年で無競争集団主義を実施している場合は、「自分の個性に自信をもち、援け合う集団」から何人か入っているから、彼らは4-5月から運動可能であり、運動が自然発生するほうが普通であった。 その集団の団結は大変強力で、しばしば1年のクラス会が高校3年まで持続する位だから、彼らは23年になっても、問題児集団の暴力をおそれないのであろう。
  ---グループ外の生徒の「○○たちは、守ってくれる仲間がいるから」という発言を何回か耳にしている。

 しかしいきなり23年の担当になった場合は、すべての生徒が群小グループに分かれ、問題児集団の暴力を恐れているから45月に大衆的につきあう運動をおこす事は不可能である。 したがって1学期に大グループが成立するかどうかが成功失敗をわける事が多い。 2学期の成立でも問題児は目に見えてよくなるが、前記の基準までゆかない事が多いのである。
 基準は「友達関係が一変して、有力リーダーのグループに移り、通知表54321合計が4以上回復(上昇)」である。知る限り「3年間非行の再発が知られていない」例の十分条件であり、必要条件に近い。 だから運動成功率にはこの基準を用いる。

 前記の一連の授業(すべて別項)により、昼食のグループ(家庭で遊ぶグループとほとんど等しい事は父母会で何回も確認)は大きくなってゆくが、いつの成立かかが問題である。
 以下の指導はそのあとである。  

リーダー会議を教師が昼休みに招集する。 このリーダー会議は班長会で代行してはいけない。 「授業の座席」にあるのと同じく「遊びグループ代表会議」とする。 つまり班長は先進的生徒の代表(教師の理想?)や仕事を押し付けられた生徒たち(現実?)であって、班長会は生徒全体の意向を代表していない。 だから班長会で決めたとおり生徒が動くとは限らない。 グループ代表者会議ならば決定には全員ないし大多数が従う。 ただし教師が生徒を説得するという強引な指導ではその会議がもたない。 全員が本音で賛成するような内容での行動(その中で生徒は自力で変わるのだ)を決定しないと会議はたちまち空中分解する。 以下の例ではその代表者会議にタバコに手を出しているハンパといわれる程度、それまでは典型的反教師派だった生徒も参加している事を念頭においてほしい。 

 まず実践例の場合から。  最初は定型的話し合い、すなわちプログラム化された授業である。
 「某はいつも休み時間に他クラスに行ってしまう。どうしてだろうか。」   生徒「友達が多数いるところに行く」
必ずそう答える。反教師派がほとんど消滅してしまうから当然仲間が少ない。
ただし問題児君はそれが担任のせいだとは思っていない。

    「某と一緒に遊ぶ事はできないか。 某は何が好きか」
 実践例3の場合はバンドが好きという事で、腕白組のリーダー鈴木君らがもと反教師派クラス生徒や他クラスの仲間も入れてバンド仲間をつくっている(教師主導でない)。 その1つ前の例では問題児君が運動得意で体力が並以上あるという事から、クラス男子が相撲を流行らせる事になり、問題児君を引き込む事になり、担任は教室でのドタンバタンという騒動を黙認しなければならない事に決まった。 某君は「大関」になった。 卓球仲間に誘うとか、女子の単なる家庭遊びに誘うとか、皆で某が楽しくなるという事で考える。だからタバコにちょっとは手が出ている諸君の代表でも賛成であり、一向困らない。 ほぼ全員の支持が得られる。

 この時「トランプ許可」と「昼食座席自由」、また仮説実験授業(生徒に支持される授業なら他でも良い筈)「酒井式行事」等が威力を発揮する。 強力問題児とトランプをしている生徒、昼食をともにしている生徒が必ずいて、彼らの多くは1年担任生徒と反教師派から親担任派に転向した生徒である。 彼らの積極的な助力があるからたいていは問題児の友達グループを二重にできる。 二重になれば問題児をめぐる力関係が変化した事になるから、良くなる方向性は確立され、どこまで良くなるかだけが問題となる。
   あまりにも非行が進行していてタバコやシンナーしか楽しみがないという事であれば友達グループを二重にする事ができないから、強力問題児がさほど反抗的でなくなり、秩序を積極的に乱す事はしないというレベルであきらめるしかない。
 酒井一幸氏の中学校行事改革 
訓話や討論より先に生活を変える指導
無競争集団主義での座席
さまざまな条件での実践例
無競争集団主義でのトランプ指導
無競争集団主義での進路指導